湿っぽい話の後にアホ話をそっと差し込む。
※永井大好きすぎて気持ち悪い沖田さんと、あほのこな永井しかいないよ!
【特に理由はないけど永井に蜂蜜ぶっかけようぜ!の巻。】
頭のてっぺんから垂れ落ちるどろりとした液体。 うなじを伝い、自衛官の代名詞ともいえる迷彩服の内側まで入り込む冷たさに、永井はしばし呆然と固まっていた。 「わ、悪い永井……大丈夫か?」 「申し訳ありません永井先輩! クリーニング代は弁償します!」 半笑いの同期は後でシメるとして、蒼白になって震えている後輩には、なんとか笑みを向ける。 「そんなのいいって。食い物なんだし、普通に洗濯すりゃ落ちるからさ」 そう、彼に悪気はなかったのだ。食堂で、蜂蜜の蓋が開かないと四苦八苦した末、蓋が開いた瞬間に力を籠めすぎた手から瓶が吹っ飛び、永井の頭にクリーンヒットした上に中身を浴びせかける羽目になるなど誰が想像できただろう。 わざとではない、悪意などない、ならば怒ることはできない。 ―― こんな時、沖田さんならまず、相手を安心させるから。 人生の師と言っても過言ではない先輩に倣い、寛容なところを見せてやる。 「あ、あの、でも自分がうかつだったので……」 顔に垂れてきた蜂蜜を手の甲で拭い、甘ったるさに眉を寄せて口の端を舐める永井に、後輩は安堵からか緊張からか赤面しつつ言い募る。 「ん?」 「今からでは風呂にも入れませんし、体を拭く手伝いを自分につとめさせてはいただけないでしょうか……っ!」 「俺も手伝うわ。連帯責任つーか、保護監督?」 なぜか口元を押さえてひくつきながら笑っている同期はさておき、真面目な奴らしく、真っ赤な顔で息も絶え絶えに提案してきた後輩がなにやら可哀想になってくる。 きっと士長に粗相を働いたことがいたたまれず、なんとか失点を取り返したいのだろう。 先輩としては、その健気な心意気を汲んでやらねばなるまい。 「あー……背中は無理だからなぁ。じゃあちょっと部屋に戻って」 手伝ってくれ、と言いかけた永井の両肩を、背後から誰かががしりと掴んだ。 「永井のことは俺が引き受けるから、お前らは気にしなくていいよ」 にこやかな、しかし有無を云わせぬ宣言に、永井以外の人間が凍りつく。 「沖田さん?」 「じゃ、行こうか永井」 「え、でもあのそんな、沖田さんは無関係なのに悪いです」 「助け合うのがバディだって教えただろ? ほら、急がないと遅刻するぞ」 ぐいぐいと腕を引かれながら、悲しげな顔をしている後輩に「ほんと気にすんなよー」と声をかけて食堂を後にする。 妙に早足な沖田に小走りについていきながら、永井は、沖田さんはやっぱり優しいし頼りになるなあなどと、ひっそり感動していたのだった。
*****
なお、沖田の脳内では、後輩が手伝いを申し出たのを目撃した瞬間に 『永井先輩……こんなところにまで蜂蜜がついてますよ。指じゃとれないな……』 『あっ!? や、やめ……舐めんなバカ……ああっ』 『ああ、違う蜜があふれてきちゃいましたね』 『んあっ、吸うなぁ……ひぁ、あん、あ』 『先輩すげえかわいいっす、自分もうたまんねぇっす……!』 というピンク色の未来予想図が0.02秒で展開されたのである。 実際、Tシャツを着用していたために蜂蜜は肩甲骨までも到達していない状態だったが、永井に近付く悪い虫はすべて撃ち落とす無敗のスナイパー、沖田の辞書には『疑わしきは排除』と記されている。容赦は不要。 かくして今日も、永井の貞操は無事に守り抜かれたのだった。
【熟柿をめぐる冒険】 熟れすぎた柿。
皮をちょっと剥いてずるずる啜る行儀の悪い永井くん。 の、肘あたりまで汁が垂れてきたのを、なんかえろいなーと、それとなく観察しながら柿を剥いてる沖田さん。 の、肘まで袖まくりしてる腕がいい具合に筋が浮いてるのをかっこいいなぁと眺め、自分の左腕をしげしげ見つめて『貧弱……』と内心がっかりしてる永井くん。 の、右腕の肘の先からついに汁が垂れ落ちて、ジャージのズボンに滴ってるのが気になる!すごく!舐めたい!な沖田さん。
「なんすか?」 「肘、垂れてるぞ」 「うわ!」
慌ててTシャツの裾で拭くから、永井の腹チラゲットだぜ!!な、残念な沖田さん。 普通に脱ぐのとは違って、自らまくりあげるというのが大事なんです、ここ試験に出ますからね! あーいいもの見た、と思いきや、柿の残りを口に押し込んでもぐもぐほっぺた動かしてた永井くんが、柿を飲み込んだ喉の動きがまたあれだ、ちょっと違うものを飲ませた時のあれを思い出しちゃうね!おっさんでごめんね!と一人反省会の沖田さん。 ……永井が自分の指を舐めて、どころか手首まで舌を這わせてるから、こっちの手が止まります。
……俺の手も柿の汁で濡れてるんだけどね! 舐めて、とか言ったら引かれるよね!
「ふ……年を取ると、守りに入るもんだよな……」
遠い目をしつつ、もう今日は永井が泣くまで徹底的にやるかーとか思ってるような沖田さんは残念すぎた。
【それなんてエロゲ?】
山野訓練中に、奇妙な塚を蹴り倒してしまった永井。 その場では何事も起きなかったものの、その夜から夢の中に巨大な蛇が現れて永井の体を這い回るようになった。 そして、次第にある異変が永井を蝕む。 誰にも気付かれたくない。 沖田には絶対に知られたくない、軽蔑されたくない―――。
必死に耐え、今まで以上に自主的な体力錬成に打ち込む永井。 しかし無理が祟り、倒れてしまう。 医務室に運ばれた永井を見舞った沖田は、永井の体に巻き付くように浮かんだ細かな鱗状の痣に驚くが、永井が目覚めると痣は薄れ、消えた。 「なにか、悩みでもあるのか?」 痣のことはひとまず忘れ、何かから逃げようとしているような永井を問い詰める沖田。 しかし永井はかたくなに「大丈夫です」「なんでもありません」と繰り返すのみ。 「永井、お前だけの話じゃないんだぞ」 思わず永井の腕を掴んだ沖田、その時、異様な感覚が身体に走る。 「……っ?」 ぞくりと疼いた、それは性的な快感に似ていた。 戸惑い、離そうとした手は、永井と視線が絡まり止まる。 先刻までの弱った様子は何処へやら、永井は奇妙に虚ろな、しかし、妖しい色香の滴る笑みを浮かべていた。 目を逸らせない沖田に、永井が手を伸ばす。 頬に触れ、首の後ろまで滑る指先の冷たさに、肌が粟立った……快い戦慄が体の芯に熱を与え、生唾が口の中に湧き出す。 ゆっくりと、永井の顔が近付く。 唇が重なる寸前、 「永井……」 囁きで呼んだ瞬間、永井は大きく身を震わせ、飛びすさるように離れた。 その顔は蒼白、先ほどの妖艶さは消え失せている。 「ごめんなさい……ごめんなさい、沖田さん……っ!」 ベッドから滑り降り、裸足のまま駆け出していく永井。 突然の豹変にあっけにとられながらも、沖田は可愛い後輩の異常な様子に気を揉む。 「どうしたってんだ……?」 永井の冷たい指が触れた部分が、火傷でもしたように熱かった。
――― 俺は、なんてことを……! 絶対に、おかしな奴だと思われた。 走り続け、逃げ込んだ資材倉庫の裏でずるずると座り込む永井。 あの、蛇がまとわりつく夢を見るようになってからだ。 男が欲しくて、仕方なくなる。 誰なら満足できるか、物色する眼差しを同僚に向け、男の精を吸い、思う様貫かれ注がれることを願ってしまう。 誰でも良いから、どんなに酷くしても良いから抱いてくれと、誰彼構わずすがりたくてたまらない。 淫乱な女、いや、畜生以下だ。 ――― 沖田さんには、沖田さんだけにはこんな俺を見せたくないのに……。 膝を抱き、嗚咽を漏らす永井の耳に、誰かの足音が近付いてくるのが聞こえた。 構わずに何処かに行ってくれと願う心と裏腹に、小さくうずくまる体を隠すような影が落ちた。
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というようなエロゲ展開、どこかにありませんか? ございませんか?
・事情はわからないが、永井の苦しみを見てられないから……!な、純愛沖永ルート 純愛ゆうても、やることはやるんですけどね。 ・ヤバい霊(モン)引っかけて来やがって……とりあえず相手してやるから無茶はするな、な、隠れた優しさ三永ルート ・謎はすべて解けた!お前の異変はその塚にまつわる伝説通りなんだよ!わかったからさっそく塚を直しに、あれっ永井なぜどうして俺を押し倒……アッー!な一永ルート
選択ミスでバッドエンドなモブ姦コース、異種姦コースもありますね。
【唐突に始まり終わる】
ベッドに手足を投げ出し、口を開けて寝ている永井。 まったく無防備である。 それは当たり前だ。 ここは沖田の部屋で、警戒する必要などない。普通なら。 少し前まで、永井はここで昇格試験のための勉強に取り組んでいた。座学は苦手だと自己申告していたが、決して物覚えは悪くない、教え甲斐のある生徒だ。 しかし、日中の疲れと、たらふく掻き込んだ夕飯の消化とで訪れた眠気には抗えず、うとうとと船を漕ぎ出したところで、採点するから少し休めとベッドを貸した、といういきさつ。 消灯時間には永井の部屋に帰さなくてはいけないが……どうにも惜しい。 「かわいいなぁ……」 眠っていると体温が高くなるのか、普段から血色の良い頬は薄い桃色に色づき、内側の艶々しい粘膜を覗かせる唇も美味しそうにふっくらとしている。閉じた瞼は、短いが密に揃った睫毛に縁取られ、永井の可憐さを強調している。 ……と、他人にはあまり賛同されなさそうな(しなくていい、永井の可愛さを噛み締めるのは自分だけでいい)感想を胸中に抱きつつ、沖田は枕元に腰をおろした。 起きるかなと危ぶみながら、そうっと屈み、永井の顔に自分のそれを近付ける。 すうすうと、健康的な寝息を肌で感じられる距離。 睫毛が絡みそうな、あと少しで、唇が触れる距離。 「おきたさん」 突然呼ばれて、滅多なことでは動じない心臓がはねあがった。 「……な、がい?」 顔の位置はそのまま、つい、呼び返してしまう。 ぱちりと、永井の目が開いた。 まっすぐな、明るいきれいな目だ。 「しゃっかんほう」 「え?」 「尺貫法です」 それだけ言って目を閉じ、すやすやと眠りを再開。 ―― 寝言かよ! どうせなら沖田さん大好きとか言ってくれればな! 安堵と落胆が混ざった吐息を落とし、短い前髪ごと、なだらかな額に唇を寄せる。 今はこれで我慢だ。
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沖田のベッドを借りて寝ているわずかな間に、すごい夢を見た。 「永井、よくやったな」 正解のご褒美だ、と、沖田がおでこにキスをしてくれる。 なにせ夢なので、日頃は胸に秘めた願望もだだ漏れである。 「口にはしてくれないんですか?」 拗ねて尋ねると、沖田は快活に笑い 「それは、試験に通った時な!」 そんなことを言って、頭をわしわし撫でてきた。
現実では、消灯まであと十分だから起きろ、と揺さぶられていたのだが。 目をあけると、意外なほど近い場所で沖田がこちらを覗きこんでいて、夢の名残を引きずったぼんやりした意識のまま、両手をのばして抱きついてしまった。 「おっ? なーがい、寝惚けんな」 ぽんぽんと背を叩かれ、我に帰る。 「? ……うっ、わああ! すみません、間違えましたすみません沖田さん!」 「誰と間違えたんだ? お母さんなんて言うなよ」 「違います!」 にやにやと追及してくる沖田に、まさか、夢ではあなたとラブラブだったんで!などとは言えない。 「本当にあんなご褒美なら、神風吹かせてやるっつーの」 自分のベッドに潜り込み、唇に指で触れてひとり赤面する永井は、同刻、沖田が『どうせならチューくらいしてくれても!!』と、悶えていたことなど知るよしもない。
(双方向片思いウメェのターン!!)
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