※鬱注意
※三沢さんが闇沢さん







【闇沢さんおたおめ】
【都合により零式ラリ沢さん】

「なーがいくん、上官の誕生日には、ちょっと過激なプレゼントじゃないかなぁ」
 にやにや笑う三沢の手にはTNT。
 俺はといえば額にMINIMIの銃口をぐりぐりと押し付けられており、もう全然笑えない。
「誕生日とか関係ねーよ、さっさとくたばりやがれ」
 遠くに蹴り出された小銃に未練がましく伸ばした手が虫みたいに地面を掻くのを、三沢は面白そうに眺めている。
「はは、言うじゃない。てっきり殻でもくれるかと思ったのに」
「誰が……っぐ、ぅ」
 銃口が、額から喉元に下りてくる。押される苦しさに口を開くと、三沢が間近から覗きこんできた。
 血の気のない真っ白な肌、陶器じみた白目には、瞳孔のひらいた真っ暗闇の瞳がきょろきょろと動いている。
 開いた口の上をぞろりと舐めた舌には、温度がない。
 こいつは人間じゃないと、否応なしに知らされる。
 睨みつけ、唾を吐き出す。
「三沢さんの誕生日は、来ねえんだよ。俺が、来なくしたんだよ」
 だからこいつにはあの人のふりをする資格なんかない。俺には悼む資格なんかない。
 殺すつもりなんかなかった、なんて、言い訳もできない。
「……永井」
 不意に、三沢の声が沈んだ。
 ぼやけた視界のなか、笑いを消した奴はまるでまともな人間みたいに見える。
「俺はずっと、お前が羨ましかったよ。当たり前に、ふつうに生きていられるお前が……」
 革手袋の指が、俺の頬を拭う。
 優しくもない、押し付ける強さがまるであの人のようだ。
 探る指先で、すがりつきたくなる。
「永井、お前はそのままでいろ。何も背負い込むな。だから」
 白い貌がひび割れるように、口角が嗤いに歪む。
「……はやく、目を」
 覚ませ、と。
 先は言わせずに、どうにか引き抜いたナイフを三沢の喉に突き立てた。
 言葉のかわりに口から溢れた黒い血が俺の顔を汚し、見開かれた目が瞼を震わせ、ぐるりと裏返る――倒れこんできた重いからだを抱き止め、一度だけ、強く抱き締めた。
 これっきりだ。
「無茶な命令、してんじゃねーよ」
 そのままでいろなんて、とんだ無茶振りだ。
 力いっぱいに屍を押し退けて、涙と混ざった黒を拭い、立ち上がる。
 振り向かずに銃を拾い、光のあるほうを目指して走り出した。
 俺をたすけてくれた人たちを、あと何回殺せばいいのか――うそ寒い疑念から、一歩でも遠ざかりたかった。






これじゃ、お祝いじゃなくてお呪いデースネー!!





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