リアタイのアホネタから。


【お菓子をくれなきゃいたずらします!】

沖田さん→
「永井ごめんな、お菓子はないんだ……だから俺にいたずらしていいぞ!」
「り……了……っ(爽やかな笑顔で無茶振りされたー!!)」

闇沖田さん→
「なーがいー、お菓子やるからいたずらさせろよー。おーい、どこだ永井ー」
「(絶対やだ!!)」



闇田さんは永井くんの口に麸菓子をぶちこんだ上で悪戯すればいいと思います。
小目標:【沖田宏】をジャックオーランタンで怯ませて逃げ切れ。



【しょうがないから闇沖田さんに麸菓子を渡すハロウィン】
【考えるな、感じろ】


 人の気配がしない廃屋の傍、街灯が投げかける光の輪の中、細い柱に背を預けて、永井は深い溜め息をついた。
「ここまで来れば……大丈夫、だよな」
 10月31日。
 いわゆるハロウィンだ。
 去年は仮装こそはしなかったが、器用な奴が手慰みに作ったカボチャのランタンが宿舎の玄関先に並べてあったり、食堂にお菓子が置いてあったりで、それなりに楽しかった記憶はある。
 飴玉をいくつか拝借して沖田の部屋のドアを叩き「お菓子といたずら、どっちがいいですか」と訊ねたら、実に爽やかな笑顔で「いたずらかな!ほら永井、俺にいたずらしてみろ」と促されたのは……結局のところ悪戯されたのは永井だとか、飴玉はとても口には出せないような用途に使われたとかも思い出すと頭を抱えたくなるが、そこはそれ、今は遠い昔の話だ。
 現在、永井の身に差し迫る危機はより厄介である。
 いつものように鉄塔のあたりをうろつく闇霊を構ってやっていたら、かつての同期が『ハロウィンだから』と氷砂糖の詰まった袋を寄越してきた。
 色気のない素朴な甘味だが、闇霊はこんなものでも大喜びして跳ねまわる。
 自分もひとつかじりつつ、公園の鳩か鯉にでも餌をやるノリで闇霊たちにばらまいてやって、小学校にいるやつらにもくれてやろう、と思い立ったのがよろしくなかった。
 寄ってきた闇霊に氷砂糖をぽいぽいと放り、空中キャッチした奴を褒めてやったり、袋が空になってもねだってくる奴を「また今度な」と撫でてやったりと楽しく過ごしていたら、青い色彩がいきなり降ってきた…………正確には、校舎の上のほう、たぶん屋上あたりからから永井の目の前に飛び降りてきた。
 正直いって固有名詞で呼びたくないその闇人は、不測の事態に度肝を抜かれ、咄嗟の対応ができない永井に
『永井って、甘いもの結構いける口だったよなぁ?』
 世間話のように訊ねてきたので、思わず頷いていた。
『はあ……嫌いじゃないです、けど?』
『そっか。じゃあ、お菓子やるから悪戯させろよ』
『……は?』
『ハロウィン、だろ』
 不穏極まりない笑みを向けられ、黒い革手袋の指がわきわきと蠢くのを見た瞬間、永井は脊髄を駆けあがる悪寒と危機感に従い、一目散に逃げ出していた。
 アレに捕まったが最後、去年の比ではないことをされる。
 内容は見当もつかないが、それは強烈な直感だった。



 複雑に道が入り組んだ住宅地は、アレの巡回ルートからは遠い。
 光の下にいれば発見されるリスクが高まるとはいえ、闇人から逃げる時間稼ぎにはなる。
 だから大丈夫だ。
 と、自分に言い聞かせても、嫌な予感が止まらない。心の中に警告音が響いている。
「……沖田さん……」
 呟き、座り込んだ膝に顔を伏せる。
 この一向に醒めない悪夢の島で、闇人と馴れ合って暮らしていることに、慣れたわけでも甘んじているわけでもない。
 連中にナマハゲ扱いされてることに納得しているわけでもない。
(『悪いことすると永井がくるよ!』ってなんだよと苛ついて、闇霊の目の前でパンダを蜂の巣にして以来、みんないい子になったぜ!と当のパンダに嬉しそうに報告された。嬉しくない。)
 沖田を自称するアレが『永井が死にたくなるまで、その殻ァ預けといてやるよ』などと、この身体はお前のものじゃないとか絶対そんなことにはならないとか、突っ込み所しかない妄言を吐いて以来、どうにも調子が狂っている。
 ……市子に追い回されている最中に助けてもらったことは感謝しているが、銃声に紛れて「いい加減さぁ、俺の永井にちょっかいかけんのやめない?」「そっちこそ、私の永井さんに愛想尽かされてるくせに未練がましいよ」「照れ隠しがわからないようじゃ、お嬢ちゃんに永井を満足させるのは無理だね」「はぁ? 永井さんが自分から乗っかってきておねだりするくらい調教した上での孕ませ余裕ですけど?」「ははっ冗談、それなら俺は」……そこから先の応酬は聞くことを断固拒否した。
 なぜ視界ジャックで様子を確かめようなんてしたのか、後悔しかない。女子中学生こわい。
 孕めねえよ!と叫びたいがあの子だからなんだか未知の扉をブチ開けそうで笑えないというか沖田(仮)は一体ナニをする気だ。
 たまには羽目をはずすこともあったけどいつだって優しくて穏やかで、永井を気遣ってくれた温厚でまっとうな先輩はもういないんだと、改めて痛感する。
 ぐす、と鼻を鳴らしたところで、鋭い破砕音が響き、頭上の街灯が砕け散った。
「ッ……!」
 焦って立ち上がり、左右を見渡した永井の背後から、迷彩を纏う二本の腕が絡み付く。
「つーかまえた。お前の悪戯はここまでだな、永井」
 猫撫で声の囁きが、おいかけっこの終了を告げた。



「まずは、お菓子をやらなくちゃな」
 不吉に笑う彼の右手には、全体的に黒く艶光る太い棒がある。
 どうやって調達したかはわからないが、駄菓子屋で売っている麸菓子だ。やたらと甘ったるく香ばしい匂いからしても間違いない。
 欲しいか欲しくないかでいえば、この状況では欲しくないし、水なしで完食はきつい。
「永井、あーんして」
「自分で食べますからコレほどいてください」
 両手首を後ろ手に縛られ、どこかの家のじめついた畳の上に座らされている素敵な状況。もう泣きたい。
「放したら逃げるだろ?」
「逃がしてくれるんですか」
「それは、永井のがんばり次第かな」
 ですよねー。
 どの方面へのがんばりかは聞きたくない、なんとなく。
 眉をしかめていると、口元に麸菓子を差し出された。
「ほら、くわえて」
 表現が嫌だ。
 唇を引き結んだままでいると、白い顔が首を傾げる。
 麸菓子の角で永井の唇をふにふにとつつきつつ「あぁ、お菓子食べるより、早くいたずらしてほしいって思ってる?」優しげに放たれたとんでもない台詞に、背筋が凍った。
「いただきます」
 時間稼ぎだとしても、市子に宣言しようとしていた何かを実行されるのは嫌だ。とにかく嫌だ。
 あ、と大きく口を開いて、差し入れられた柔らかな棒菓子をさくりと噛みきる。
「永井……情緒を大事にしてくれよ」
 残念そうに溜め息を吐かれても、舐め回したりしない、するわけがない!
 口のなかに広がる砂糖の甘さと、独特の食感を噛み締める永井の横に屈み、頭や背中を撫でてくる手つきはあくまで優しい。
 甘やかされている錯覚を引き起こしそうだ。
 一口めをごくりと飲み下すと、すかさず、菓子の先っぽを唇に押し付けられる……まさか喉奥まで突っ込んでこないだろうなと危ぶみながら口をあけると、きちんと一口ぶんを舌を撫でるようなやりかたで入れられた。


******

という状況からのネクストコナンズヒント。


・麩菓子の黒糖には媚薬成分が!という、BL界あるあるありすぎる展開。
・じゃあ二本めいこうか!(意味深)え?水がほしい?手が使えないから口移しだなー。
・普通におやつ食べさせられていいこいいこされて、なに考えてんだろな……と見てたら「俺さ、永井が食ってるとこ見るの、好きだったんだよ。甘いもの食べる時なんかにこにこしてさ、可愛いのな」と思い出話を開始されてしんみりしたところで、「去年のこと、覚えてるか?」……うわー!
・三沢さんが助けにきてくれたよ!
・市子ちゃんが助け…………ピンチが二乗になったよ!!
・空気読まない3バカが麻雀しに来たから助かったと思ったらいつのまにか賭け麻雀の景品になっていた。どうする、永井!

真実はどれかひとつ!
かもしれないし、じゃないかもしれない!!!


「去年のこと」については追記にたたみました。

・とても短い。場面のみ。
・エロくない。
・シモい。
・むしろキモい。



続きを読む 2012/10/24 14:12
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