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あなたが帰る場所を


赤司君のはにかむように笑う、その笑顔が好きだった。



「美織、そこの日誌を取ってくれないか」

「…自分で取りなよ」


目も合わせずにそう言うと、彼は差し出していた手を降ろして溜め息をついた。
見れば困った顔で苦笑いを浮かべていた。



「美織は僕が嫌いなのか?」

「日誌を取ってあげなかったくらいで…面倒臭いからやめて」

「だって昔はそんな冷たくはなかっただろう?」

「……言う通り、私は赤司君が嫌いだよ」



今の赤司君は嫌い。
なぜなら今の彼は何でも知っているみたいな、自分が世界の軸みたいな、そんなふうに笑う。私の好きだった笑顔を見せてはくれない。



「そのくせ一緒に行動しようとするじゃないか。今もそうだ」


ほら、また見透かしたような笑みを浮かべて。
私が赤司君の事が好きなのを知ってるんだ。

私は彼の笑顔だけじゃなくて、どんな表情も、仕草も、性格も好きだった。



「残念だなぁ。僕は美織の事が好きなのに」

「………ふざけてるの?」


でも私が好きになったのは前の赤司君だ。それでも彼が今の人格になった後も、私は彼への気持ちを捨てきれない。捨ててしまえば楽だろうに。
もう前の赤司君には会えないかもしれないのに。

でも、その人格が『赤司征十郎』がこの世に存在するために生まれてしまった存在であることもわかっていた。
何だってこなせても、全ての物を抱え込む事はできないこと。背負えないこと。そこから零れてしまったものを拾わずにはいられないこと。それらを話す人間がいなかったこと。

飄々とした外面から、私達は何も知る事が出来ない事実を覆そうとした。



「……赤司君がいつでも赤司君に戻れるように私が傍にいるって決めただけ」





あなたが帰る場所を、
(消さないために)


(…どんな赤司君も好だなんて嘘をついた私への制裁だ)




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赤司君の今の人格が生まれた理由なんて知りませんけどね!!
というか赤司君二重人格で…いいんだよね…??あれ?最近単行本買えてないから本誌立ち読みなのですよ……というか単行本にそのくだりってもう収録されたっけ?あれ?
もし入ってなかったら単行本派の方々すみません

ちなみにこれ書いてる時に夢主の大日方が生まれたんですけど、大日方とこの短編の女の子は違う人間です。








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