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君は全部とは言わないのに


ガーネットみたいな、カーネリアンみたいな、ルビーみたいな。
その瞳に私は一目惚れをした。




「美織」

「なーに?赤司君」


そう返事を返すと、彼はやれやれというふうに溜め息をついた。
教室の窓から入り込んだ風が赤司君の細い髪を揺らした。


「そんなにオレを凝視するな」

「だって赤司君、綺麗なんだもの」



宝石みたいにキラキラ輝く目がひとつ瞬く度に、瞼の隙間から星が降る。その星は赤司君の周りを飛び回った後に消えてしまうのだけど。
そうして私は何度も何度も赤司君に恋をする。

燃えるような恋とよく言うけれど、私のこの恋は静かに揺らめく陽炎のようなもので、音もなくただただそこで視界を不安定なものにするだけのもの。火照って赤司君の顔がだんだん認識できなくなって、決して掴むこともできないのだ。



「確かに最初は一目惚れだったけど、今はね、赤司君の心も、表情のひとつひとつも大好きなの」



胸に手を当てて、祈るように言った。

ああ、こんなに想いを伝えているのに、どうして赤司君は私を好きになってくれないのかしら。



「ねぇ、赤司君、私、赤司君が好きだよ」


赤司君はすごく綺麗で、頭が良くて、運動もできて、たくさんの選択肢の中から私を選んでくれるわけは無いのだろうけど。わかっているけど。
あーあ、なんて厄介な恋だ。不毛、ってこういうことを言うのかな。だって王子様だもの。

すると赤司君がまた、さっきよりも深い溜め息をついた。


「美織」


名前を呼ばれて顔を上げると、赤司君が笑っていた。
目を細めて私を見つめるその顔は、馬鹿だな、とでも言いたげな表情をしていた。それでいて、どこか照れ臭そうに言うのだ。



「オレの想いは心や表情のひとつひとつが好き≠ネんてものじゃないよ」

「?」


「美織の存在自体が好きだ」




君は全部とは言わないのに
(結ばれる未来を許していいのか考えて、)
(いつもオレは足を止めてしまうから)




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甘々にするはずだったんですけどね!!あれ?
赤司君わからんぬ








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