7話


「えー、まぁ自己紹介」

「あっ、マネージャーになります両角です!お役に立てるよう頑張りますので、宜しくお願いします」


オレが高尾に言ったからいけないんですかね。いやまぁ、高尾だけじゃなくてどうせ他の部員にもマネージャー募集のこと言うつもりだったけど。え、何?高尾お前何彼女連れてきてんの?あ、彼女じゃなくて友達だっけ。いやいやいやいや待て待て待て、あの時高尾顔赤らめてたよね?この子なのか?この子好きなのか?えっ高尾片想いしてんの?それはそれで面白いが……いやいやいやいや待て待て待て。違うだろ、ここはなんでお前好きな子連れてきてんのって叱る所だろ宮地。いや、かっこいいとこ見せたい女子いないのとか言いましたよ!言いました!




「両角さん、何か困ることとかあった?」

「いえ!大丈夫ですよ。」

「両角、タオルってどこに出した?」

「あっ、すみません、あそこです!」

「救急箱ってどこだっけ」

「今持ってきますね!!」






「…………」

「おう、どうした宮地」


両角の仕事ぶりを眺めていると、木村が横に並んできた。木村はオレと仲が良く、スタメンのひとりだ。


「いや、よく働くなと思ってよ」

「両角さんのことか?」

「あと仕事を覚えるのが早いし」

「ああ、それな。記憶力がずば抜けて良いんだとよ。特に人相手だと、オレも驚いたよ」

「?」

「さっきあの子が部員の顔と名前を何人か知っていたんだが、どうやら1度見た顔は忘れないらしい。すれ違っただけでもな」

「それまじかよ」


すれ違っただけでとか、高尾や緑間といい、今年の秀徳高校一年はどうなっているんだろう。魔法学校か。超高校級のあれか。
そもそもキセキの世代は緑間以外にもいる。秀徳以外の一年バスケ部もこんな感じなのだろうか。



「というか、ああいう子と高尾が友人というのは意外だった」

「あ〜、あいつ無駄にコミュ力高いからな、どんな奴連れてきてもおかしくないとは思ってたけどよ」


すると救急箱から出した絆創膏を部員に渡した両角がこちらを見て小走りで近寄ってきた。


「ええっと…あの、部活は何時に終わりますでしょうか!!」

「部活自体は7時…だったか?その後居残る奴多いが……つーか堅くなりすぎじゃね」

「いや、人とお話するのはとても緊張するじゃないですか」


うーん……木村の言う通り、両角と高尾の仲が良いのは意外かもしれないと思った。そりゃ会話ぐらいならするかもしれないが、先日初めて両角と会った後、ちょくちょく一緒にいるのも見かけているし。


「そういうの高尾に聞かないのか?仲が良いんだろ?」

「えっ……うーん…なんか…」

「………本当にお前ら友達なの?」

「!!いやちょっとなんか一生懸命やってて声掛けづらかっただけで!……大切な友達ですよ」


両角が微笑んで言った。
よく少女漫画で見る、あの良い感じの雰囲気の時のほわほわした背景が何となく見えた気がした。え、何お前高尾好きなん?なんて言おうとしてやめたのだが、


「…両角さんは高尾があれか、好きなのか」


木村がなんと言ってしまった。
いや!まぁナイスと言えばナイスだが。マネージャーの恋沙汰なんぞにろくに話した事もない先輩が首を突っ込むのはどうかと思って口をつぐんだのだが、なんかよくわからないけど木村なら許される気がする!大坪あたりも許される気がする!

すると両角が手をブンブン振って、慌てて違う違うと連呼し始めた。


「いやいやいやいやいやいや違いますよ!違います、だって私、高尾君とちゃんとお話する仲になってから2、3ヶ月くらいですよ!」

「『いや』多いし、時間とか関係ないだろ。一目惚れなんて言葉もあるぐらいだし」

「大体私なんかにそんな感情抱かれても気持ち悪いだけっていうか」

「マイナス思考すぎんだろ」

「というか本当、友達としか思ってないですよ?」


つくづく思うが両角はすごく良い子……というかとても謙遜しすぎる子というか……マイナス思考というか。
まぁ働き者な所は褒める。



「先輩方なーに両角さんナンパしてんすか」

「あ?ナンパなんかしてねーよ」

「私が呼び止めちゃっただけだよ」


後ろから現れた高尾を見て俺は、マネージャー募集の話をした時のこいつの赤面顔を思い出して、その後先程の両角の言葉を思い出し、高尾が気の毒に思えた。
まぁ高尾の方も自分が赤面している事に気付いていなかったようだから、何とも言えないが。




今は友達
(今は。)




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先輩方は部活して下さい





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