6話


「高尾お前さ、友達にマネージャーとかやってくれそうな奴いねぇのかよ?」


朝練中に宮地さんが隣に来てそう言った。



「マネージャー?なんですか突然」

「募集だと。部員の割にマネージャーがいないだろ?高尾友達多そうだし帰宅部なんてひとりやふたりいんだろ」

「うーん…つか、そういうのって宮地サンも多そうじゃないっすか。特に女子とか?どーせモテるんでしょ〜」

「…ま、否定はしないがな。だがキャーキャーうるさいくてやかましい」

「アイドルはいいのに?」

「あの子らはたくさんの戦争を乗り越えてきた強い子らなんだよ。応援したくなるだろ?」

「…………まぁ、もうほとんどの奴が部活入っちゃってるっすよ。第一こんな男だらけのむさ苦しい所に『私やりまぁーす』みたいな女子いないっしょ」

「裏声キモいやめろ」

「酷い!」

「…まぁな、男だらけの所に飛び込むのは周りの目も気にするだろうしな。
例えばお前かっこいい所見せたい女子とかいねぇの」


かっこいい所見せたい女子がいないかなんて宮地サンが言うと何だか新鮮だった。血の気が多くて真面目なドルオタ先輩。まぁどうせ冗談だろうけど。

それにしても、今、


「(なんで両角サンの顔が浮かんだんだ?)」


真っ先に彼女の顔が浮かんだものだから、自分でもかなりビビった。最近一緒にいるから女子って聞いて両角サンの顔が浮かんだだけかな。
思案しているうちに何となく胸のあたりがムズ痒くなってきて、紛らわせるようにその場片手のボールをつく。


「まぁ部活中にイチャつくとか論外だし他でやれって話だしな。冗談だけど、って、え?」


そういえば両角サンって部活は何か入ってるのだろうか。確か入ってなかった気がするけど。でも習い事とかしてるかもだし、そしたらマネージャーとか無理だよな。

……ん?マネージャー?なんで両角サンをマネージャーに誘うみたいな感じになってるんだ?


すると突然、宮地さんの鉄拳が脳天を直撃した。


「なっ何するんすか宮地サン!オレ何もしてないのに!」

「もういいから部活しろ!こっちが恥ずかしいわ!」

「は、何の話っすか、もう……」


「(何こいつ顔赤くなってんだよ!!)」









「両角サンって部活入ってたっけ?」


両角サンが次の教科書を出している時に何気なく訊いてみた。


「…?何の?」

「いや、何でもいいけど」

「興味はあるけど入ってはないよ」

「興味って、例えば?」

「うーん……合唱とか、写真とか……け、軽音とか…?」

「なになに、両角サンって楽器弾けんの」

「ううん、弾けないけど、でも弾けたらかっこいいよね!!」

「そういうの両角サン聴くんだ?」

「割といろいろ。電車の中とか暇だからよく聴いてる」



この前一瞬に帰った時に知ったのだが、両角サンとオレの家は近いと思ってたんだけど、どうやら両角サンは『○○方面』という意味で言ったらしく、方向は一緒だが秀徳からオレの家を過ぎてもっと先の方だった。登下校は電車らしい。

ここ最近両角サンと過ごす事が多かったけど、両角サンについて初めて知る事ばかりだ。じゃあもしかしたら料理苦手だったりするのかな。いかにも料理できそうな顔してるけど。


「でも運動部は多分入らないかも」

「えっ」

「運動神経とか皆無だから…」

「…マネージャーは?」

「うーん……どういう仕事やるのかよく知らないから何とも言えないかなぁ…」

「ドリンクつくったり、洗濯とか、記録とか…」

「う、うん…?」


ハッ!いやいやいやいや、なんでマネージャーの仕事説明し始めてんだオレ。めっちゃ必死じゃねーかオレ。なんで運動部は入らない言われてガッカリしたんだオレ。両角サンをマネージャーに誘う気満々じゃねーか。いやでも両角サン前にバスケ好きって言ってなかった?部活入ってないし適任じゃね?もうここまで来たら言う?言うべき?


「それで、なんで突然部活の話を?」

「え!?いや、うちの部がさ、マネージャー募集しててさ、先輩が誰かやってくれそうな人いないかって、」

「男子バスケ部ですか…」

「いや!男だらけのむさっ苦しいとかとか普通に無理だよな〜!」

「わわ、そういうことじゃなくて!私、マネージャーになったとして、お役に立てないんじゃないかと…」

「それは!問題ない!役に立てるよう頑張ろうっていう意思が大切なんじゃねーかな!!」

「うーん…」


悩んでる!!推しすぎたかな!無理して入部しようとか考えてくれてたらどうしよう!やべぇどうしよう!!どうしよう真ちゃん!!!

真ちゃんを見ると自分の席で本を読んでいる。くっそ、来いよ!お前もバスケ部だろ!勧誘しろよ!仲良くやろうぜ真ちゃん!そんな1人で本読んでないでおいでよ真ちゃん!!



「あ、両角サン…?無理して考えてくれなくても大丈夫だからな?自分の気持ち大事にしよーぜ」

「無理してはいないですけど、マネージャーになる場合はまずどうしたら良いですか?」

「それはやっぱり監督にまずは……って、え?」




自分の気持ちを大事にした結果
「良かったらやらせて頂きたいなって、マネージャー」



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夢絵サイトでアップしてた夢漫画のシーン入りました。文章にしたら所々夢漫画の方と違っちゃったんですけど…。
高尾君がちょっとうじうじしちゃっててすみません……でもこういう恋沙汰には臆病だったりウブだったりしたらいいと思います。





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