僕を置いて幸せになって 


「ローの事は嫌いじゃない。今でも好きだよ。」
では何故と言うようにローの視線が訴えてくる。
「僕が駄目なんだ。無理だ。そう思ってしまった。」
だから僕は船を降りる。ローの頬を雫が伝う。その雫を拭うことは僕には出来ない。縄を外してと言うと、ローは素直に応じてくれた。楽になった手足。僕はローを抱きしめる。
「……っ、お前は残酷だな。」
自分でもそう思うよ。全部、全部、自分の我儘だ。僕はここで貴方の幸せを願う。いつか貴方は僕を忘れてしまうかもしれない。でも僕は貴方を忘れない。

僕を置いて幸せになって
(僕じゃ駄目なんだ)


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