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神奈川にきて一ヶ月ほどたった今でも、私はここら一帯に何があって何処が面白いのか興味がなかったし、知る必要もないと思っていたからあえて自分で外に出て探索しようとしなかった。
おかげで今こうやって、ハチの世話になっているわけだが。

「あそこのサンドイッチがそりゃもう美味しくてねー。あ、あそこはドーナツよりチュロスのほうが美味しいよ。で、あそこのカフェはランチタイムになるとサラダ食べ放題でー」
「見事に食べ物ばっかだね。お前という人間性がよくわかるよ」
「なっ、まるで人を食いしん坊だと言いたげな口振りだなっ」
「食いしん坊でしょ、どこをとっても」

来たことない小洒落た通りには喫茶店やら古着屋やら、またまた可愛らしい店が並んでいた。
へぇ、こんなとこあったんだ。女子高生が好きそうな場所、が第一印象だった。

「ハチはここ、よく来るの?」
「ん?まぁ小腹が空いたら店をハシゴしてるよ」
「だろーね」

こういう店の食べ物って量が少ないから、ハチがそれで満足するわけない。少し考えればわかったな。

「こうやって遊ぶときはよく来るよ」
「ここ、立海生も来る?」
「あー、いるいる。こういうとこくらいしか寄り道するとこないからね。それに、もうちょっと行くとゲーセンあるから」
「ふーん」

成る程ね。

「とりあえず、どこか寄ろう。何も食べてないんだ」
「奇遇だね、私もお腹が空いたとこだよ」
「お前は何もせずとも空腹だろうに」

ということで。
ハチ曰くピザが絶品だという店に行くことにした。
朝からピザも如何なものかと思ったけど時間的には昼でもおかしくないので私は承諾した。




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