10-1

その人の人間性は、見た目でわかる。

初めて見たけど、この子は駄目だなと思った。
人を見かけで判断するのは嫌だけど、人は人をまず最初見かけで判断する生き物だ。俺もそれの典型的なタイプだと思う。
だから言わせてもらいたい。
この子は、駄目だと。

昼休みの終わり頃に蓮二が彼女、牧野まなかさんを連れて来たときは驚いた。
要件を聞いたらマネージャー志望だという。蓮二はやりきれない顔をしていた。
彼女を適当にあしらい帰ってもらって話を聞くと、何でも「女王」に畳み掛けられたという。
正直言うと、その「女王」が誰なのか俺は知らない。
体が奇跡的に回復して学校に登校すると、その「女王」の話で持ちきりだった。何の根拠もなしに流れる噂を信じるほど俺も馬鹿じゃないが、関わるとろくなこと起こらないだろうなと思った。
そんな人に関わったら、何故だかめちゃくちゃにされそうだと思ったからだ。

クラスが同じだという仁王とブン太にどんな人かと聞いても「関わらないほうがお前さんの為じゃ」とか「怪我じゃすまされないぜぃ」と言われた。

何がなんだかわからないが、とにかく怖い人だと、正体も名前も知らない「女王」を確定づけていた。

話を戻すが、その「女王」が何の目的で彼女をマネージャーに下手あげたのかと蓮二に聞くと、彼曰く「暇潰し」だという。
開いた口がふさがらないとはこの事だったんだろう。暇潰しでそんなことする人間はいない。呆れと怒りが五分五分の接戦を繰り広げた。

なんでも朝の騒動に関係していたらしい。転校生である牧野さんが、この学校で敵に回してはいけない「女王」に喧嘩を売ったら逆にボコボコにされたという。
どんな喧嘩かはわからないが、殴る蹴るではないらしい。

まぁとにかく、だ。

俺は今、その「女王」が暇潰しで寄越してくれた牧野まなかさんをどうしようかと考えているわけだ。

「…どうしても、ウチじゃないと駄目なのかな」

遠回しに拒否をするが、彼女はにっこり笑った。

「はい!皆さんのお役にたちたいんです」

この子めんどくさいな。蓮二が嫌がるのも無理ないか。でもなんでこんな子を「女王」は暇潰しとして寄越したんだろう。

「…真田はどう思う」
「…どうも思わん」

うん、俺もそう思うよ。むしろ何も考えたくないな。

俺が療養中に2人、今もせっせと働いてくれているマネージャー達を思い出す。誰にでも気立てなく接するその子達は、媚びもうらなければ必要以上に選手、いや部員全員に近づくことはない。
何でも2人共彼氏がいるらしく、必要以上に俺たちに近づくとその彼氏が怒るという。
ベストな人たちをマネージャーに迎い入れた部員達に感謝する。

まぁそんな2人を見ていると、目の前にいる牧野さんがすごく残念に見えるから不思議だ。この子は2人と違い、確実に裏がある。

そんな子を迎えて練習に支障をきたしたら俺が帰ってきた意味がない。それは真田も同じだろう。
答えは、一目見た時からわかっていたのだ。

「残念だけど……マネージャーは間に合っているんだ。他をあたってくれないかな」

これが一番いい返事だ。諦めるだろう。

だが彼女は、一瞬鬼のような形相になったかと思うと、また笑顔を作ってなおも抗議する。

「で、でもこれから大変な時期だし…レギュラーの人たちだけでも、お手伝いを」

なんというか、呆れた。
この人馬鹿だなと心から思った。レギュラーの人だけでも、なんて。それが本音だろ。

「女王」が暇潰しとして寄越したと言っていたが、多分この女子は「女王の言葉を自分なりに変換し女王の後押しから調子に乗った」と見た。少し長いけどね。これがきっと真相だ。
なんというか、めんどくさいことしてくれたよね。
真田も見た感じ、イライラしている。

「これ以上はこの部にいらないんだ」

ため息まじりにそう言うと、部室のドアが開いた。





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