06-1

他人の罪を自分が罰せられてもいいと考える人間はいなくなっただろう。



事件は起こった。
俺が話しかけたのがまだ午前9時にも満たなかった時間だったとすると、事件が起きたのは午後1時になった時だった。
犯行に及ぶまでの時間はたった4時間。犯人Xは何を思ったのだろう。朝の出来事をみてなかったんか?

俺が教室を出て、戻ってきたのにそんな時間はたっていない。せいぜい5分、いやそれより短いかもしれない。
仮に5分だったとする。5分のうちに、折原心亜の机の上はひどいことになっていた。

本人のものであろう教科書は全て切り刻まれ、ごみ箱をひっくり返したような有り様だった。あまり見えなかったが、机に落書きらしきものもある。

オイオイ、ヤバイぜよ。流石に。

その机が折原心亜のものでなければ、俺は違う反応をしていたかもしれない。
あいつにこんな事すんのは、危険じゃ。
そう思った。俺がそう思ったんだから皆そう思っていたと思う。

クラス内部の犯行なのは目に見えている。その机から少し離れたところで、数人の女子がクスクス笑っていた。
初日っから何をしとんのじゃ馬鹿女共。

確かにあれは怒っていいだろう。偽善であれ、仲良くしようとしたことはいいことだ。
それを踏みにじった折原を陥れたいのはわかる、でもよく考えんしゃい。
この状況を見た折原は、確実に何かしかけてくる。

クラスの奴等は他人を装い見てみぬフリをしていた。
クラスを見渡してると偶然丸井と目があった。
自然と近づく。

「オイ、どうなっとんじゃあれは」
「あ、ああ…。女子の何人かが…」

それ以上何も言わなかった。
口止めされているらしい。

「…折原は?」
「わ、わかんねぇ…」

確か4時間目が終わってすぐ教室を出たのを見た。
早いなとか思って、たまたま折原の机を見たら、教科書を置いたままだった。

置いたまま?
まさか、もしや。オイオイ、ちょっと待てよ。
わざと置いてったのか?

「あははははっ!」

笑い声が、静寂な教室に響いた。






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