59-1

池袋に行くのは初めての試みである。
東京在住のため電車に乗り慣れてはいるが、あの池袋に行くのは少し緊張した。柄の悪い奴に絡まれたらどうしようか。
古武術を習っていたわけだがいざとなったら足がすくんで動けないなんてことにならないよう注意する必要がある。

ちなみに今日は晴れている。


会えるだろうか、首なしライダーに。


「痛っ」
「!」

なんてことを考えていたら、通行人とぶつかってしまった。
その拍子に相手の定期券が落ちてしまった。
急いで拾い、手渡した。

「すみません、これ」
「ああいえ。大丈夫です。あ、どーも」

相手はキャップの上にフードを被るという二重装備で、赤い眼鏡をかけていた。

定期券を受けとるとさっさと歩いて行ってしまった。
何故だかすごく印象に残る。

あんな格好で痴漢にあわないのだろうか。というのも、上はパーカーであったが下はショートパンツで、長い足がスラリとしている。
女子の考えることは、よくわからない。

「……」

時間が時間である。
とりあえず行くだけ行ってみるか。部活が休みでよかった。


電車に乗ると案外人はいた。というよりだいぶ多い。
まぁ休日だし仕方ない。

座席は全て埋まっていた。時間をずらしていてもどうせ同じだろう。

なるべく人と向き合わないよう、隅に移動した。
するとさっきホームでぶつかった人がいた。なんという偶然か。

その人は二重装備ゆえ端にいる俺には気づいてないようだ。
同じく彼女もつり革を握っていた。

「まじやばくね?」
「ウケるわー」

すると、いかにも柄の悪そうな男二人組がやって来た。
車内の人間もその空気を読まない声の音量に眉を潜めた。

自然と道をあけ、男二人はあのフードの人の後ろに。
そこからまた人がやってきて、結構な人数が収まった。
俺のほうからはあの三人が見えるわけだが、大丈夫だろうか。

不安になったが、電車は動き出した。




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