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幸村の機嫌は悪いと思う。ああやってベンチで空気を睨むのは機嫌の悪い証拠だった。
そして俺も、だいぶ機嫌が悪い。

「仁王」
「…ん?」
「あまり荒れるな」

それだけ言って、参謀こと柳はボールを二個渡してきた。

「荒れとった?」
「ああ」
「…プリッ」

ポーカーフェイスは得意なんじゃけどのう。どうやら表に出ていたらしい。
出たくもなるか。

「牧野はなにを考えとんじゃ」

コートからもよく見える牧野の仕事っぷりは正直気分が悪かった。
昨日までのは何だったのか。怪しくて仕方ない。
柳もそれを横目で見た。

「多分あいつもあの写真の存在に気づいたんだろう」
「…そういやお前さん、幸村にも言ったんか?」
「言ったぞ。精市曰く「この手の噂は早くなくなるよ、仁王ならなおさら」だそうだ」
「俺がこういう手の常連だと思っとるみたいな発言じゃの」

笑って誤魔化しておいた。
自分で言っといて何だが、そう思われるのも仕方ないと思ってる。でもそれを言うとややこしくなりそうなので言わないでおいた。

「あと」
「ん?」
「お前、半田を知らないか?」
「半田?俺が?知るわけないじゃろ」

なんで俺に聞いてきたのか。言っておくが俺は半田とはあまり接点はない。来栖とは多少あるけど極力関わらないようにしている。

「半田がどうかしたんか?」
「来ていないらしい」
「ほー…。珍しい」
「筒井が連絡を取ったんだが、どうやら繋がらないらしい」
「サボりじゃろ。気にするほどのことでもなか」

俺がそう言うと柳もそうだな、と言ってもう一回牧野を見た。
それにつられて俺も牧野を見た。

「…牧野って、前いた学校が不明らしい」
「ほう」
「心亜情報」
「…折原か」

悔しそうに言った。

「…こんなとこで駄弁ってると怒られるぜよ。そろそろ真田の啖呵が切れるころじゃき」
「柳生とジャッカルを誘ってダブルスでもやるか」
「話が早いのう」

そう言って二人を捕まえに行った。

半田が無断で休むのは珍しいといまさら思ったが、あの彼氏が絡んでるのは違いないだろう。あの彼氏にとって俺らは邪魔者以外の何者でもないし、第一来栖は半田のマネージャーを快く思ってなかった。そして半田は来栖第一。マネージャーの仕事より来栖が大事なのは考えればわかる。

つまり、来栖が半田を独占している。

まぁ、他人の恋にはなるべく関わりたくないからお好きにどうぞ、と言っておく。しかもあいつら二人なら、なおさら。




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