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着信音が鳴り響いた。重い瞼を開け携帯に手を伸ばし、とりあえず切った。
よしもう一度寝ようと寝返りを打つと、またピピピピと鬱陶しい音が鳴った。

誰だよ…全く…。

イライラしながら携帯を手に取り、目を瞑りながらもしもしと呆けた声を出した。

『おっはよーございます!起きたー?こちら九瑠璃と舞流のモーニングコール株式会社です!』
「……」

ハイテンションな声が私の耳をつんざいた。うわぁ、もう勘弁してよ。

「……とりあえず、頼んだ覚えないんだけど」

正直、まだ寝ていたい。でも電話越しのマイ姉にはそれが伝わっていない。きゃっきゃと笑う声がした。

『あっれー、まだ寝てたの?早寝早起き!美容に悪いよ!さぁ起きた起きた!』
「……」
『こらー、寝ちゃ駄目!クル姉も一言言ってあげて!』
『起……』

それでも返事をしない私にマイ姉が、心亜ちゃん起きてー!と叫び、私の目は開いた。
目をこすり、部屋にある時計を確認すると9時15分だった。

「…何か用?」
『だからモーニングコールだよ』
「迷惑極まりないんですが…」

昨日寝たの遅かったんだから、もうほんと勘弁してほしい。低血圧なんだって、私。
するとまた笑い声。

『だってさ、心亜ちゃん全然連絡くれないんだもん!かと言って夜中に何処かの誰かさんとイチャイチャしてる最中連絡したら迷惑かなって』
「はた迷惑な気遣いありがとう」
『だからこうして朝に電話してみたんだよ!』
「朝も朝で迷惑です」
『あっ、なになに心亜ちゃん!もしかして隣には裸の男の子とかいるのかな!?きゃー大胆!でもお姉ちゃん達はそんなこと許さないぞ!』
「…とてつもない誤解されてるなぁ、私」

朝からこのテンション出せる姉さん達はすごいなぁと他人事のように思った。

でも確かに、こっちに来てから姉さん達とはあまり連絡取り合ってなかったな。まぁ、取り合う連絡がなかったからなんだけど。

「…とりあえず、元気そうだね」
『元気元気!ねっ、クル姉』
『愉…』
「うん、それなら何よりだよ。じゃあおやすみ」
『こらー二度寝禁止!また夜更かししたの?』
「金曜日の夜は夜更かしをするためにあるんだよ」
『そんな屁理屈言ってると静雄さんに嫌われちゃうよ?』
「あーそれは嫌だな」

答えてからなんで静雄さんが出てきたんだろうと考えてみたけどマイ姉の声に遮られた。

『それよりそれより、神奈川ってどう?やっぱりお洒落なの?映画とかドラマのロケとかあるの?幽平さん見た?』
「私はまだ見たことないかなぁ…」
『近々そっちに遊びに行くからね!』
「その時は連絡してね」
『了』
「あ、クル姉。マイ姉よろしくね。それじゃ、またね」
『ばいばーいっ!』

電話を切った。
どうやら元気でやってるらしい。
睡眠しようと目を閉じたけど目が冴えてしまったようで寝れない。こっちの生活はあっちの時と比べて随分だらけてしまった。
それは多分、あの口うるさい人たちがいないからだろう。

電話帳にはたくさんの名前がある。でも今、この空間には自分しかいない。

悲しくなんてない。
ただ、静かだなと思うだけ。






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