48部員全員が来た。欠席は一人。
その一人が来るのを待っていたあたしに、幸村先輩が近寄ってきた。
「筒井さん、半田さんは?」
「それが連絡なくて…」
「ふーん…珍しいね」
幸村先輩は遠くで仕事をしている牧野先輩を見ながら目を細め言った。
さっきの言葉はどっちのことを言ったんだろう。
「…筒井さん、牧野さんはさっきからあの状態?」
「え?…はい、さっきから仕事してます」
ふーんと呟き、優しく微笑んだ。
「じゃあ筒井さんは、半田さんに連絡とっておいてくれない?あと牧野さんに仕事教えてあげて」
「はい」
よろしくね、と言って幸村先輩はベンチに座って腕組みをした。その顔は少し青白かった。
仁王先輩を見たら、とてつもなくイライラしてるのがわかった。ボールの打ち方が荒れていた。牧野先輩かな、原因。
「なぁ、筒井」
声をかけられた。
ガムを膨らます丸井先輩と、拗ねた顔の切原がいた。ちなみに切原とは、あの朝の一件以来口をきいていない。
「…牧野、どーしたんだよぃ。アレ」
「…さぁ。改心したんじゃないんですか」
昨日までの牧野先輩とは全く違うということを、誤解のないように言っておこう。仕事をするのが当たり前なのだが、昨日までの先輩はそんなことしなかった。
そんな先輩がああも真面目になってしまったのだから、驚くのも無理はないだろう。
腑に落ちないと言いたげな顔の丸井先輩。でもすぐに変わった。
「半田は?」
「今から連絡するところです」
「ふーん…。ってか赤也、お前も何か言えよ」
「…別に、話すことないんで」
切原が言った。目をあわせないようにしてるのがムカつく。
「…じゃ、電話してきます」
「あ、おう」
足早にコートから出た。切原がこっちを見てたのがわかったけど無視をした。
だって牧野先輩が睨んでるんですもの。
『この電話は電波の届かない場所にあります。合図の音が鳴りましたら――』
無機質な音声。さっきら何度も紗和子に電話をかけたけど、一向に出る気配はなかった。
不審に思いながら電源ボタンを押して、アドレス帳から翔也を見つけ電話をかけた。
『この電話は――』
音沙汰無し。
どうやら二人一緒にいるらしい。あいつら二人でいるとき携帯の電源切ってるんだよね。
紗和子は今日練習があることくらい知ってるだろうし…多分、翔也が行くことを拒んだんだろう。
かといって、無断欠席はまずい。
渋々メールで、連絡を欲しい意を伝えた。届いたらしいけど、返信は遅そうだ。
時間を確認すると、9時を回っていた。
折原先輩は起きているだろうか。あの人にメールして、なぜこんなことになっているのか小一時間問いただしたい。
折原先輩にメールをしようかどうか迷っていると、一件のメールを受信した。
「紗和子?…早いな」
独り言を言って受信ボックスを開いた。
会いたいなー
今日、ヒマ?
「…」
顔をしかめた。ええ、もちろん紗和子じゃないですよ。彼氏です。
「…あの馬鹿が」
なんでこう、毎度毎度空気を読めないのかなこいつは。
今日部活、と送るとすぐに返信が来た。
明日は?
「…明日も部活だっつーの」
返信するのが面倒だったけどここでブチると20件くらい来るので嫌々ながら返信した。
するとまた返信。
えーつまんないー
近々そっち行くね
あ、仕事邪魔しちゃったかな?
また夜メールするから、またね、バイバイ(^o^)/
あ、マネージャー頑張ってね♪
俺はいつでも応援してるよ!
毎回毎回思うんだよね。
なんでこんなのが彼氏なんだろうって。
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