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最近、この学校でも首無しライダーの話題が広まってきた。
ある者は興味本意で、またある者は怖がり、またある者はその存在を否定する。
どんな形であっても、話題がなければこの話を、となるくらいには昇格した生きる都市伝説。正確には「走る都市伝説」かもしれない。

まぁそれはさておき。

ここで文頭に戻る。
この学校でも、ということは、他の学校ではもうすでに広まっている、という解釈ができるが、これは俺の解釈だ。実際にはわからない。
つまり広まってないかもしれないということになる。
だが、氷帝では広まっている。いや、広めた。
誰が。
俺が。

退屈しのぎというか、正確には締め切りに終われその上大きな事件もなかったから、二週間に一度発行している学園新聞にネットで見つけた「池袋の黒バイク」について書いた。
何度かテレビでも話題があったのもあり、退屈な生徒たちの目に止まったら今はもうこんな状態だ。

だが、それもすぐ終わる。

人の噂も七十五日と言われるが俺はそうは思わない。
もっと早い。噂だけで約2ヶ月と15日もつほうがどうかしてる。つまり俺が思うに、あと1週間もしたら、今度は俺たちテニス部の大会について生徒たちが囁きあうことになるんだろう。

「…まぁ、得体の知れない都市伝説と近くにいるスターなら、近くにいるスターか」

日吉若はそう言って、紙パックにストローをさした。


そのまま俺は紙パックの中身をストローで飲みながら、廊下を歩く。
行き先は図書室。それまでにこれを飲み干さなきゃいけない。あそこは飲食禁止だ。

でも、これを飲み干すほど喉が渇いてるわけじゃない。これ、というか抹茶オレが飲みたかったわけでもない。
つまりなんで買ったんだ、という考察にたどり着く。
いや、本当は単なるお茶が飲みたかった。でも一階の自販機は長蛇の列で買う気が失せ、二階にある紙パックの自販機に行ったらそこは空いていて、というが誰もいなかったのだがお茶は売ってなくて、お茶に色が似てるという理由で抹茶オレを買ったというわけだ。

我ながら阿呆なことしたなと思うが、抹茶オレは旨い。抹茶オレに非はないだろう。

なんでこんなネタにもならないことを考えているかというと、図書室に行くまでが長いからだ。長いがゆえにこんな無駄なことを考えていられる。これほど無駄な時間はないだろう。

それにしても。

首無しライダーは結構前から囁かれていた噂だったらしい。俺はテレビでとり上げられるまで知らなかった。
大衆に知れわたったのは最近だ。ネットにあがった、写真と動画。それがキッカケだ。

でも、待ってくれ。

俺はその写真を見た。確かに真っ黒だった。
俺はその動画を見た。確かにライトも何もなかった。

でも、でもだ。

なぜそのバイクの主に「首から上がない」とわかるんだ?

可笑しくないか?
たかが一般人が写真と動画を見ただけで「なんてこった、こいつ首から上がないぞ!」なんてわかるか?わからないだろ。
確かに気味悪いよ、あんなに黒いと。
でも「首から上がない」なんていう結果にはたどり着かないだろ。
俺はそんな結果に行きついた人間が「気味悪い」ね。
誰かが面白半分に「これ、首から上が無いように見える」と書き込んだ、と思わなくもないが、そんなこと書いてもここまで広まらないだろ。
何なんだ、一体。
あと、これを探している最中、面白い集団を見つけた。
なんて名前だっけな…。気の抜けるような名前だった気がするが、詳しくは調べていないからわからない。

つまりそれほど、俺は黒バイクに夢中だということだ。

じゃあ本題だ。

なぜ俺が図書室に向かっているか。答えは明白。調べるためだ。

首から上がない、「デュラハン」という生き物を。






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