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「ヤマをはろう」
「は?」
「この際、折原のことは後回しだ。目先の問題から片付ける。牧野だ」
「そうか?俺はまず、心亜を先にケリをつけたほうがエエと思うけどのう」
「だからヤマをはる」
「?」
「今、この時点であいつを目の敵にするのは危険だ。奴も何か対策を練っているはずだ」
「…だから、一か八か、ヤマをはって牧野からっちゅーことか」
「ああ。……だが、多分折原はこのことだって睨んでいるはずだ。あの写真に関連付けて確実に何か考えている」
「確実に?」
「確実に」




イヤホンから聞こえてくる二人の会話はとても滑稽でとても面白い。

ああ、なんて愉快なんだか。
この私が盗聴してるだなんて知ったら、彼らはどんな反応をするのかな?
ああ、なぜ盗聴しているのかって?
私は一度決めたら最後まで相手をなぶるタイプだからさ、相手の動向は少しでも知っておきたいわけ。
え?なぜ盗聴できるのかだって?
そんなの簡単。あの場所に仕掛けたからだよ。その理由はさっきも説明した通り、相手の動向を知るためさ。

急展開でついていけない?ついてきてもらわないと困るなぁ。もしかしたらこれが重要なポイントなのかもしれないんだから。

うーん、でもやっぱりもうちょっと凝った話にしておけばよかったかな?まぁ彼らには全っ然バレてないんだけどさ。
柳は洞察力に優れてるみたいだけど思い込みが激しいなぁ。それじゃ全然、まだまだ、だねぇ。

イヤホンからはまだ二人の会話が流れてきている。
バレてないのか、つまんないの。実は私が仕掛けた小型盗聴器は二人は知っててわざとこんな話をしている、みたいなのを期待していたのに。残念。

話を最初から聞いてたんだけど、仁王は私に気があるらしい。迷惑この上ないなぁ。
君に好かれても牧野さんから睨まれるだけで全然嬉しくないんだよねぇ。

それにホラ、私、君嫌いだし。

イヤホンから聞こえる二人の声は次第に小さくなって、最終的に階段を降りる音が聞こえ、何も聞こえなくなった。

どうやら秘密の会議は終わったらしい。
イヤホンを外して、ニヤリと笑った。

んー、さてさて。

私は彼らのマニュアルを覆すため、彼女をマネージャーにさせないと。
やっと楽しくなってきた。
私の本領発揮だよね。

そんなこと考えてニヤニヤしていたら教室のドアが開いた。
いたのは仁王。
教師が呆れたふうに、どこにいた、と聞くと保健室、と言ってクラスの奴らに笑われていた。
そんな仁王のお出ましに牧野さんは嬉しそう。
私はというと、そんな仁王と目があった。

さっきの会話を思い出して笑ってしまった。そんな私の笑みを見て仁王は顔をしかめたが、すぐ口角をあげてニヤリと笑う。

戦いの火蓋が切って落とされた?いやいや違う、そんなたいそうなものじゃないよ。
ちょっとしたいたずらの、遊戯が始まったんじゃないのかな?
これから何が起こるのか想像しただけで私の退屈はぶっ飛んでしまうよ。
ああ、楽しみだ。


私、折原心亜は誰にもわからないようにニタリと笑った。






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