31-2

「…ピヨ。おはようさん」
「ああ、うん。おはよう」

まさか一番会いたくない時に会うとはな。
引かれあってる何かがあるんかの、俺たちの間には。

「怖い顔しないでよ。スマイルスマイル」

そう言うと心亜もにっこり笑う。
普通に笑ってればかわいいのに、とか思ってるわけでは決してないが、普段の悪巧みを考えた時の笑みからしてみたら、かわいいんじゃないかと思う。

「どうかした?もう朝のホームルーム始まる時間じゃん」
「お前さんこそ。そこで何しとるんじゃ?」
「え?私はサボろうと。保健室でも行こうとしてたんだけど君に見つかっちゃったから」
「…すまんかったの」
「別にいいよ?ちっとも怒ってないから」

また笑った。
ああ、何なんじゃ。調子が狂う。
ああ言えばこう返し、こう言えばはぐらかし。
どんな答えを期待してるんじゃ。
いや、多分こいつは期待だとかそんなものはしていない。ただ、相手の困った顔が見たいだけ。
…気があいそうじゃの。

「仁王は何してんの?牧野さんと仲良くなった?」
「んなワケないじゃろ。お前さんと同じ。気分悪いからサボろうかと思うての」
「気分悪いんだ」
「ああ、最高に悪い」
「へー」

ニヤニヤ笑いに戻ってしまった。
顔はいいんだからもっと普通にしてればいいのにの。もったいない。

…あの写真は多分心亜が撮った。………確信は、ない。でもそれ以外にセンがない。

「さぁて。教室戻ろうかな」
「サボらんのか?」
「君に見つかっちゃったからなぁ」

いかん。
今戻ったら、何をしたのか聞けない。

「一緒に」
「?」
「一緒にサボらん?」

心亜は一瞬、笑いをやめた。
でもすぐニヤニヤ笑い、階段を降りてきた。

「いーや」
「…」

と言って、俺を通りすぎる。
上履きの音が小さくなる前に、振り向いて心亜に問いかけた。

「なんで?」
「…」

そう言うと心亜は立ち止まり、くるっと振り返り俺をみて言う。

「一緒にサボったりなんかしたら、変な噂たちそうじゃん」

ニヤニヤ笑い、そう言った。

「私そういうの御免だから。サボるなら一人でどーぞ」

じゃあね、と言って心亜はまた俺に背を向け歩き出した。

「……クソ」

噂たつとか、気にしてんのかあいつ。
かわいいとこ、あるじゃなか。
かわいい。でも、次は何をする気じゃあいつ。

不穏な空気を感じながら、俺は心亜がいた階段を上っていった。


着々と舞台が出来上がったが、配役はまだ、エキストラのみ。
主人公は、誰なのか。俺じゃないことは確かだ。






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