30

私は仁王と付き合っていた。

私が仁王が好きだっていう噂が広がって、本人の耳にも入ってきたらしい。
それから仁王は面白がってちょくちょく私に話しかけてきたりした。
それから、じゃあ付き合おっか、ってなった。

付き合いだしても私たちの関係は変わらず、特に恋人っぽいこともせず、メールしたり喋ったり。
それだけだったけど楽しかった。

友達は絶対長続きしないよ、なんて言ってたけど、それは私が十分理解していた。
仁王は、一部の女子の間では女たらしで有名だった。いや、知らない人のほうが少なかったんだと思う。

だから私は多少の覚悟をしていた。

いつか捨てられる、わかっていた。
でも、それまで仲良くやっていきたいと思ったし、仁王から別れようと言われるまで私は仁王の彼女でいたかった。

なのに

なのに

なんで、別れようと言われたあの時、私は泣いてしまったんだろう。

メールで別れを告げられた。
直接言ってほしかった。
文字だけの冷たい告白。

人間ってあんなに泣けたんだね。

そのメールはもう削除してしまったからどんな文面なのか忘れてしまったけど、『ごめん、もう付き合えない』っていう文だけは覚えている。あとは適当に謝罪の言葉が綴られていた。

そのメールを貰った日が、折原さんが立海にきた次の日だったんだから、笑ってしまう。
それから私は、折原さんはおろかあのクラスに近づかなくなった。
あのクラスを通りすぎる時は自然に視線を下にしていたし、忘れ物をした時だって、2年の時まで仲がよかったマツリには借りなくなっていた。

第一、今マツリの側には折原さんがいる。
怖くて近寄れない。
別にマツリが大の友達、ってわけでもなかったし友達はいくらでもいるからよかった。

そして、そんなマツリからメールがきたのがつい先日。
見た瞬間、体が固まったのがわかった。
添付された写真は以前の私だったら大泣きしていたかもしれない。そんな内容の写真だった。
マツリがなんでこのメールを送ったのかはわからないけど、なんだか、このメールには違和感があった。
急いで前に貰ったマツリからのメールを見ていると、奇妙な点が2つ。

1つは件名。
マツリは件名には何もいれなかったのに、このメールには件名が入っている。

2つ目は、記号。
マツリのメールは記号より絵文字を使うのに、このメールは記号しか使ってない。


これ、本当にマツリが書いたの?


疑問がよぎった。

気になって仕方がなかったからその日の夜メールをした。今日のメール何?って。
帰ってきたメールが、「あれ心亜が勝手に送ったの」だった。

折原心亜さんが?なんで?

わからない。わからないけど怒りを覚えた。
折原さんにも、仁王にも、牧野さんにも。

学校裏サイトにその写真を載せてやった。
ここなら、うちの生徒の目に止まる。

そして、朝になって気づいた。
折原さんは最初から、これを狙ってたんじゃないのかと。





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