28

俺達男子テニス部の朝練には、マネージャー同士の半田と筒井で話し合ったらしく一日交代で仕事をすることになっているようだ。

で、今日は筒井の日。
ちなみにまなかは皆勤。

そう、まなかは今頃なら筒井と一緒にシャツを洗ったりなんかしてるはずなんだが。
あいつは今、テニスコートにいる。

「…オイ、なんで牧野がここにいるんじゃ」

仁王が不機嫌そうに言った。

こいつは、マジでまなかを嫌っている。一発でわかる。
別にそこまで露骨に嫌な顔するほどでもないと思うけどなぁ…。
俺がおかしいのか?

「仕事が早く終わったんじゃね?」
「…筒井はおらん。あいつ、筒井に仕事押し付けたんか」
「…仁王ー。お前考えすぎじゃね?」

確かに俺もそう思った。
でも、何もそこまでまなかを悪者にしなくてもいいだろぃ。
…いやまぁ確かに下心丸見えだけど。

「俺にしたらおまんのほうが理解できん。よく一緒にいられるな」
「上っ面だけだっつーの。好きではねぇよ」
「…理解できん」
「…そういうお前だって、折原と最近仲いいじゃん」
「あいつは牧野と違う」
「そうか?俺は折原のほうが苦手。そういや仁王って折原に似てるよな」
「は?」
「一人でニヤニヤしたり、煙にまくようなことしたり。お前ら似てるぜぃ」
「…まさか。俺なんかより心亜のほうがやばい奴ぜよ」
「!」

こいつ、折原のこと下の名前で呼んでたっけ。
いつのまにそんな仲良くなったんだ?

「第一、ブンちゃんのほうがタチ悪いぜよ」
「は?」

クク、と笑う仁王。

いや、俺はこの中でジャッカルの次にまともだろぃ。

「あんなになつかせといて、好きじゃないとはの」
「好きではねーよ。でも嫌いとは言ってねぇし」
「言ってないだけナリ」
「…深読みしすぎだろぃ」

たしかに、まなかは可愛いよ。
でも恋愛感情を抱くような人間じゃねぇ。つまり、ただ可愛いってだけで好きじゃない。
万が一あっちから告白されても即断る。
好きじゃないやつからの告白なんて不愉快以外の何物でもないしな。

これを言うと大体の奴は苦笑いする。
モテる男の言うことは違うね?馬鹿言え。気になる女に声もかけられない俺がそう思うのは仕方ねぇだろぃ。

「ってか、仁王は?」
「は?」
「折原。好きじゃねぇの?」

俺がそう言うと仁王は瞬きを2回して、顎に手を当てて考える真似をした。

「ブンちゃんからはどう見える?」
「あー…。なんか、仁王が好きそうなタイプだなぁとは思う」
「正解」
「は?」
「心亜みたいなああいった読めない奴は好みじゃき。顔もいいし。図太い神経してるとことか」
「…好きではない?」
「わからん。好みってだけ。というよりこれが恋愛感情なのかがわからん。ピヨッ」
「……」

恋愛感情なんじゃねぇのかな。

仁王がまなかみたいな一人の女を嫌うことは珍しい。ても折原みたいな一人の女に執着することも珍しい。

だから多分、仁王は折原のことが好き。

まぁこいつの性格上面白そうだから付きまとってる、みたいな解釈もできるけど。3年間つるんでる俺からしたら、羨ましくてたまらない。
仁王みたいになりてぇ。

「ブンちゃんは?」
「え?」
「好きな奴」
「どう見える?」
「いそうに見える」
「じゃ、多分いる」
「怪しいのぉ」

ニヤッニヤ笑う仁王。
憎たらしー。

「誰?」
「ばぁーか。言わねぇよ」
「いるんか」

騙された。

「…絶対教えねぇ」
「まさかと思うが牧野か?」
「違う」

それはない。話聞いてろよ。

「仁王くん!!いつまで休憩しているのですか!!」

さっきまで真田とラリーをしていた柳生がやってきた。
仁王はおお怖、と呟きラケットを持って柳生に近づいた。
俺も赤也と練習しようかなー、と赤也を探すと、あいつは下を俯いて怖い顔…っていうか泣きそうな顔をしていた。

…そういや、やけに今日はテンション低いな。
遅刻した時小さな声ですみません、なんて言って、真田が怒らないで逆に心配してたし。
あんな真田初めて見た。
まぁ、最後まで口を割らなかったけど。

…これはアレだな。先輩として聞いてやらねば。
あー、でも余計なお世話か?
話しかけられるのを待つのも、逆に気を使わせてる気がするし…。

「…あーかやっ、どうした?」
「!」

迷っててもアレなので、話しかけた。

「めちゃくちゃ暗いじゃねぇかよぃ。なんかあった?」
「あ…いや、その…」

目をそらした。言うことを躊躇ってる。
多分、すごくささいな事か、すごく悩んでいる事。

この顔だと多分後者。馬鹿だな、お前はすぐ顔に出るんだから、言っちまえば楽なのに。

「…すんません、言えないっス」
「…そか。別にしつこく聞いたりはしないから、言えるようになったら言えよな。悩んでても仕方ねぇぜぃ」
「……」
「俺だって先輩だしな。頼れ、な?」
「!……ありがとうございます」

そう言って、赤也を連れてコートに入った。
練習中、あいつはチラチラまなかを見たり、幸村くんを見ていた。まなかはそれに気付きニコッと笑ったが、赤也は思いっきり嫌な顔をしてすぐそらした。
そんな顔するなら見なきゃいいのに。
幸村くんは赤也に気づいていないらしい。
で、筒井がコートに入ってきたら、思いっきり顔を伏せて練習をした。
なんだかやけになっているようで、サーブミスをして真田に怒られてた。

で、まなかは筒井を睨んでるし、筒井は全っ然動じてないし。

…何があったんだよ。


みんなみんな、一方通行。





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