24-1死を遠ざけようとするのは重要ではない。
死ぬまでに何をするかが重要なのだ。
そう言ったのが、この人だった。
先輩からの一方的ないじめに遭遇した私、筒井梓の目の前に現れたのはあの折原心亜先輩だった。
またこの人は全く…いいタイミングですね。
いや、ほんとにいいタイミングだよ。
牧野先輩からは焦りと怒りが手に取るようにわかる。
そりゃまぁびっくりするよね。超一級の危険人物だもん、この人。
さらにそんな人に目をつけられてるときたらたまったもんじゃない。
「後輩リンチ?いけないなぁ」
折原先輩は悠長に歩き、近づいてきた。
手はパーカーのポケットに。多分あれは四次元へと繋がっている不思議なポケットなんだろうなぁ。
カッターかナイフかスタンガンか。
一体何を忍ばせているのやら。
牧野先輩は私になんか目もくれず、折原先輩を睨んでいる。相当嫌いらしい。
「先輩は後輩の鏡だよ?ほら、さっさと洗っちゃえ」
「なんであんたの言うことなんか聞かなくちゃいけないのよっ!」
「じゃあ命令だ。早く洗え」
「ッ…!」
にこりともせずに言った折原先輩。
ヤクザ顔負けのドスの聞いた声。この人すごいな。
「まだやらない?じゃあ幸村くんに言うか」
「なっ!?」
「これで君のマネージャーへのランクダウンは確実だね?残念でした。ゲームオーバー」
「なっ…ふざけんなっ!だ、大体あんたの言うことなんか信じるわけないでしょ!」
「私が言うんじゃない。筒井さんが言うんだ。言っとくけど、彼女は君が思ってるより可愛いし、幸村くんからの信頼も厚いよ」
折原先輩がそういうと、間髪入れずに牧野先輩が睨んできた。すぐそらしたら舌打ちされた。
だってめんどくさいんだもん。どういう顔していいのかわかんないし。
「ま、いっか。私はイジメを注意しただけだし。やるかやらないか押し付けるのかは君の判断に任せるよ」
この人めんどくさくなる前に投げ出しやがった。
命令までしといたくせに。
二人の様子を伺うと、折原先輩は不適な笑みを絶やさずにいる。あ、目があった。
牧野先輩は…折原先輩を睨んでから私に寄ってきた。
「あんた、このことチクったら殺すわよ」
なんて言葉を吐いて、走ってどこかに行ってしまった。
つまり、私がやれと。
「あーごめん。いっちゃったね」
なんて言う折原先輩。
変わってないな、この人も。
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