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「赤也ー、新しいマネージャーどうよ？」

クラスの奴が話しかけてきた。
新しいマネージャーっつーのは、転入早々「女王」に喧嘩売ったっつー牧野先輩のことだ。
この間からマネージャーをしている。
ぶっちゃけ、何で？って思った。
半田と筒井がいるっつーのに、部長は何であんな奴を…？
ああいう人は部長のタイプじゃねーし…むしろ嫌いだと思う。
あーわかんねぇ。

「顔はいいけど、俺はタイプじゃねぇ」
「性格は？」
「…なんか、気持ちわりぃ」
「は？」
「なんつーか…気持ちわりぃ」

意味わかんね、と言った友人Ａは帰り支度を始めた。俺も部活があるから早く行かねぇと。

「あ、そういや赤也」
「んあ？」
「あんま、そのマネージャーには近づかないほうがいいかもな。食われるぜ？」
「は？」

食われる？

誰が？何を？どうやって？何が？

「じゃあ俺も部活だから」
「ちょ、待てよ！何だよ教えろよ！気になるじゃねぇか！」
「明日なー」

じゃ、またなと言って、足早に教室を出ていってしまった。
食われる…って、どういうことだよ。

「切原ー。コートにボール運ぶの手伝って」
「！筒井…」

入れ違えで筒井が入ってきた。
半田はいない。

「…なぁ、お前さ」
「？」
「牧野先輩、どう思う？」

すると一瞬にして変質者でも見るような顔をした。

「……なに？好きなの？」
「ちっげーよ！仕事してんのかって聞いてんだよ！あとお前の考え！」

なんで怒んのよ、と元に戻った。

「…仕事はしてるけど、あたし達の仕事量はそんな変わらないよ。いてもいなくても同じ？でもあんたらは目の保養にいいんじゃないの？」
「うわっ、やめろよお前。あの人結構嫌われてんだぜ？」
「え、マジで」

気づかなかったらしい。まぁ、こいつあんまコート来ないしな。当たり前か。

「仁王先輩はかなり嫌ってる」
「同じクラスじゃなかったっけ」
「何かぶりっ子らしい。あと「女王」に喧嘩売ったとかなんとか」
「…ああ、折原先輩に。そりゃ嫌われるわ」
「は？」
「折原先輩が嫌った人はさ、必ずどん底に落とされるっていうか。必ず、学校中を敵にするんだよ」
「……」

微妙にこいつは情報通っつーか、物知りだ。
感心してると、今度は見下す顔をした。

「あーあー。可哀想に。テニス部も目ェ付けられてんじゃないの？」
「は！？」
「折原先輩が牧野先輩に目付けてるなら、あんたらも眼中にあるってことでしょ。頑張れ」
「はぁあ！？」

筒井は面白そうに言った。

「…何で楽しそうなんだよお前」
「そしたらあたしもマネージャー止められるじゃん」
「ふざけんな道連れだ」

そう言ったら睨まれた。

「それこそふざけんな。だいたい全ての元凶はお前だろうが」
「いーや違うね半田だね」
「違うね。お前があたしの名を出さなきゃマネージャーすることもなかったのに。お前のせいだね」
「それが快くボールの入った段ボール3個持ってる俺に言う言葉かよ」

フン、と足早に筒井は俺の前を歩く。
確かに悪いとは思ってる。

でも何かあったら味方になるくらいの気持ちは俺にだってある。だから、いい加減、素直になれよ。

でもこいつは、俺を、俺らを信用していない。

「…バーカ」
「足踏むよ」
「…冗談にしてもキツイからやめろよな」

段ボール3箱を持つ俺の足を踏むなんて人間の所業じゃねぇっつの。




「みんなー、ドリンク持ってきたよぉー」

牧野が来た。
作ってないくせに、よく笑って持ってこれるぜよ。

ムカつく。
なんか、腹立つ。
その笑顔もろとも、壊してやりたくなる。
心亜が目をつけるのもわかるのう。

「幸村」
「なんだい」
「お前さん、ホンマに牧野をマネージャーにする気か？」
「それは彼女の仕事を見てから決めることだ。まだ未定だよ」
「…納得いかんのう」

いつもの幸村と違う。

あの日、牧野と心亜に会った日から、口数が少なくなった気がする。
悩んでるのか？……何のために。

「参謀」
「なんだ」
「牧野がマネージャーになる確率、いくつじゃ」
「…そうだな。精市の中では無に等しいだろうが、葛藤している部分もあるだろう。30％弱だな」
「ならないとは言い切れんのか」
「珍しいな。お前がデータを聞いてくるなど」
「プリッ」
「はぐらかすな」


だってのう。
自分でもわからんくらい、俺は牧野が嫌いらしい。
女にこんな感情抱くのいつぶりじゃろ。






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