21

「柳、ハチいる?」

生徒会室に折原が入ってきた。
今は昼休みで、速水はついさっき生徒会室を出ていったので、今は俺しかいない。

「さっきまでいたが、ついさっき購買に向かった」
「…入れ違いか」
「何か用が?俺が伝えておくが」
「いやいいよ。200円貸してもらおうとしただけだから」

その言い方がやけに面白かった。
俺たち凡人とは逸脱しているこいつが、少しばかり人間味のあるやつだと思った。

折原心亜のデータは少ない。

凡人なら、比較的仲のいい人間から情報を集められるのだが、折原心亜には速水以外、いや今となっては牧野も含まれる。その2人以外と絡んでいない。
しかもあの速水にも自分のことは話していないように見える。

俺が知ってる情報は、大体が生徒会会計のコネで集めたものだ。
生年月日、身長、体重、血液型、視力なんかは学校の調査表からだ。
家族構成は速水から聞いた。母親父親はとにかく、兄が1人、姉が2人。
だが現在家族とは離れて1人暮らし。

立海にくるまえにいた学校は東京の一般の中学。
少しばかり荒れた雰囲気だったらしいが情報は少ない。
詰まる所、それしかわからない。

「200円でいいのか?」
「500円でもいいの?」
「返してくれるならな」
「じゃあ300円貸して」

椅子から立ち上がり、財布から300円を取り、折原に渡した。
ありがとうと言い、右手に納められた100円玉3枚をポケットに入れた。

「少しいいか」
「ああいいよ。今機嫌がいいから」
「お前について聞きたい」
「お得意の情報収集ですか」

ククッと笑ったが、どうぞ、答えてあげるよ、と言って壁に寄りかかった。

「まずお前は、速水以外と仲が良くないらしいな」
「ああ、そうかもね」
「親しくなりたいと思わないのか?」
「私はいつだって仲良くしたいと思ってるよ?でもあっちが嫌ってるんだからしょうがない。次」

この際だから、聞きたいことを聞いてしまおうか。

「…趣味や特技は?」
「人間観察とハッキング。あとお菓子作り。次」
「…では最後に、お前の好きなタイプは?」

すると折原ははは、と笑った。

「ぶっちゃけ言うと私、男に興味ないんだよね。ほら、私って同性愛者だから」
「!?」
「…あれ?反応見ると知らなかったみたいだね。昔男絡みで嫌な思いしてそれっきり。あぁ、でも男で好きなタイプなら」

隣にいる俺を指差した。


「君みたいなのがタイプだね」


不適な笑みを浮かべて、折原は答えた。

「ところでさっきの話どれくらい信じた?」


その言葉を聞いて、俺は正気に戻った。

好きと言われて驚き、動揺したさっきの自分は馬鹿だと思った。

「…真面目に答えろ」
「答えるとは言ったけと、「真面目に」とは君も言わなかったじゃない。あ、もしかして信じた?どこから?」
「……」
「あ、言っておくけどお菓子作りとか趣味でも何でもないから」


そう言いながら、折原は笑った。






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