19

「ハチ」
「何?」
「ケータイ貸して」
「…?ハイ」

怪訝な顔をしながらも、彼女はポケットから携帯電話を出し、私に差し出した。


6時間目に自習というのは生徒たちにとって嬉しいことかもしれない。
この時間が終われば各々掃除をして、部活に向かったり帰ったり。
私は帰る側の人間である。

まぁどちらに属していても教師もおらず課題も出ていない自習の時間は一種の至福の時間である。

目の前のハチは机を枕にして眠っているようで肩がゆっくり上下していた。

私はというと、椅子にもたれて最新のスマートフォンをいじくっている。





嵐:でさー、聞いてくださいよ
嵐:マジウチの兄貴ウザいんスよ
嵐:ことあるごとにメールとか電話してくるし
嵐:うっとーしいんスよ
嵐:ってか、ウザい
甘楽:わー、それはウザイですね!
嵐:でしょ!?
嵐:キモいんスよ
甘楽:私もそんなお兄さん欲しくないです!
嵐:でしょ!?


甘楽:でもー


甘楽:嵐さん、そのお兄さんのメールとか電話の相手してるんでしょ?
甘楽:内心好きなんですよ!
甘楽:ヒューヒューww
嵐:マジやめて
嵐:それだけはありえねぇっスから
甘楽:デーレーたーww



内緒モード

嵐:死ね



甘楽:そーいえば
嵐:ハイ何でしょ
甘楽:中学の男子テニスの関東大会、もう少しで始まりますね
嵐:へー、そうなんスか
甘楽:なんかスゴイらしいですよー?
甘楽:「神の子」とか呼ばれてる中3が半端なく強いとか
嵐:ちょww
嵐:どこの漫画っスか。厨ニ乙ww
甘楽:でもでもー
甘楽:最近までは病気持ちで、退院したばっからしいですよ
甘楽:奇跡的に病状が良くなったとかなんとか


嵐:へー


嵐:こりゃまた漫画みたいなタイミングですね
甘楽:なんか出来すぎてますよねw
甘楽:何か裏の力が働いた、とか?ww
嵐:それは神のみぞ知る、ってヤツっスよww


嵐:神で思い出したんスけど


嵐:甘楽さんは神様って信じてます?
甘楽:あー…
甘楽:神様はちょっとねー
甘楽:死神はいると思いますけど☆
嵐:死神は林檎しか食べないらしいですよ
甘楽:イヤイヤw
甘楽:それ某死神漫画のみですよww
甘楽:嵐さんは信じてるんですか?
嵐:いたらいいだろーなー程度ですよw
嵐:見たことないんで何とも言えません


甘楽:なら黒バイクは?


甘楽:あれは神様だと思いますか?
嵐:半々、じゃないですかね
嵐:でも神様ってほどのものじゃないと思いますけど
甘楽:じゃあ、やっぱ化け物?
嵐:多分
嵐:あ、授業終わった
嵐:帰り支度始めるんで落ちまーす



――嵐さんが退室されました



甘楽:はーい
甘楽:また今晩
甘楽:あ、お兄さんと仲良くしなきゃ駄目ですよ!
甘楽:じゃ、またー☆



――甘楽さんが退室されました


――現在チャットルームには誰もいません




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