11-1

「まぁ確かに2人じゃ何かと不便ですけど」

彼女を帰らせた後、既にマネージャーの筒井さんと半田さんを見つけて今のマネージャー業について聞いてみた。

「…部長の話を聞いた限りじゃ、その先輩仕事しなさそうですね」

筒井さんが言った。この子は思ったことをズバズバ言う。だが筋は通っているので反論はできないし、今の話については俺も同意する。

「紗和子はどう思う?」

紗和子とはもう1人のマネージャー、半田さんの下の名前である。

「私?うーん…」

じゃばじゃばと水と洗剤を使ってボトルを洗いながら、半田さんは返事をする。

「仕事しないならいなくていいよって感じですかね」
「はは。はっきり言うね」

いやいやそんな、と言いながらも手を止めない半田さんには好感を持つ。
もちろん筒井さんも同じだ。2人共よくやってくれている。

「でもおかしな話ですね。転校初日にマネージャー志願なんて」
「普通そこまでしないよねぇ。まるでこのためだけに立海に来たみたい」
「君たちはマネージャーにするの反対?」

筒井さんが水道の蛇口を止めた。水の音がしなくなり、部員の掛け声が聞こえてきた。

「仕事をやってくれるならありがたいですよ」
「でもやっぱり選手のみんなが嫌なら私たちがとやかく言うのもどうかと思うし…」
「部長にお任せしますよ」
「……君たち本当にいい子だよね」

何ですか急に、と笑う筒井さん。恥ずかしいなぁ、とはにかむ半田さん。
じゃあ仕事よろしくね、と言ってその場を離れた。新鮮だなぁ、ああいう子。

「好感を持った確率98%」
「!」

部室にラケットを取りにいくと蓮二がいた。見てたのか。

「どうだ。あの2人の仕事ぶりは」
「いいと思うよ」

最初2人を見たときはびっくりしたけど、部員達を見る限り彼女たちを受け入れてるようだったし、今も頑張ってくれている。

「…あ、そういえば」
「なんだ?」
「折原さんが、君に謝っておいてって。なにかされたのかい?」
「!」

一瞬開眼した。心当たりがあるらしい。

「…そうか。…半分は速水のせいでもあったが…」

速水…生徒会長のことだろうか。半分?何がだ?

「知りたい確率93%といったところか」
「え」
「顔に出ていた」

顔を指差して言われた。そんなに顔に出てたのかな。

「……そうだね知りたい。何故だか彼女にはお世話になる気がする」
「折原か?速水か?」
「両方かな」

だろうな、と笑った。笑ったということは柳もそう思っているんだ。
今のうちに調べておいたほうがいいだろう。

「…その2人は友達なのかい?」
「…見かけはな」
「見かけ?」
「ああ」

そう呟き、2人が帰った方向を見る。もちろん、彼女たちはもういない。

「友達と言うには、決定的に何かが欠けているんだ。あいつらには」
「…そっか」

愉快そうに笑う彼女たちの顔が浮かんで、俺は身震いしたのを隠すようにコートに向かった。




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