09-2「幸村、どうする気かの」
どうする、というのは牧野のことだ。
心亜のいう通り、牧野はマネージャーになるつもりらしい。今幸村と真田が部室で話している。
「俺はあいつ好かん」
「だと思いました」
柳生は眼鏡を押し上げた。
「何やら、折原さんに喧嘩を売ったとかなんとか」
「何で知っとんじゃ」
「広まっています。クラスで持ちきりです」
流石、噂好きの立海生。今日あったことは今日のうちに、ってか。
「それだけじゃなか。あいつミーハーじゃ」
「何を根拠に」
「だって考えてみんしゃい。登校初日にマネージャー志願?おかしいじゃろ」
俺がそう言うと確かに、と柳生が呟いた。
「隣の席になって色目は使うは臭いがキツいわ。やんなってしまうぜよ」
「いいじゃないですか。仁王くん女性好きですし」
「お前が俺をどんな目でみてるかよくわかったぜよ」
パートナーに幻滅していると、ブン太があれっ?と声をあげた。
「あれ、速水と折原だ」
「!?」
振り向くと、確かに速水と折原がいた。
決して距離は近くないが、目があった、と思うとこっち来て、と手招きした。
何じゃ…誰に?俺か?
「仁王くんか丸井くんなのでは?」
「え、仁王じゃね?」
「………あ」
昼休みのこと、すっかり忘れてた。
「やべっ……。柳生!先アップしちょれ!すぐ戻る!」
「え、ちょ!?仁王くん!?」
ラケットを放り投げ、心亜の元へ走った。
「えー、かき氷はレモンだよ」
「抹茶かいちご」
「おお、渋い。そして王道」
走ってくると、本人は何やらかき氷の話をしていた。
人が走ってきたっていうのにコノヤロウ。
「心亜」
「ああ、仁王。どうかした?」
「お前さんが手招きしたんじゃろ」
どうかした、ってお前。15秒前の自分思い返せ。
「そうだね。携帯返して」
「仁王に貸してたの?」
やっぱそれか。素直に言うか。
「すまんが撮れなかった。シャッターチャンスがなくっての」
「だと思った。いいよ別に。私が盗撮する」
「…悪いの」
嘘つけ。
最初から自分で撮るつもりだったくせに。
「で、今携帯は部室じゃ。取ってくるから待っとれ」
俺がそういうと、待ってましたといわんばかりの妖しげな笑み。
「今部室って、牧野さんいる?」
「ああ」
「おおやっぱり」
速水がポテトチップス、多分コンソメ味を食べながら言った。
「着いてっていい?まぁ駄目っつわれても着いてくけど」
「……」
うわ、何する気だ。速水も菓子食ってないで止めろ。
「…別にええけど、幸村と真田もおる」
「いいよ別にその2人は。用があるのは牧野さんだ」
そう言うと心亜は、速水がもっていたポテチの袋からポテチを一枚取って、バリバリと食べた。
「っていうか、私は携帯返してもらうだけだし」
「……プリッ。やっぱ面白いの。速水、お前もきんしゃい」
「え、マジで?」
暴走したら止めてくれ。
「…あと、ここ飲食禁止なんじゃけど」
「丸井は食べてんじゃん」
「…そう来たか」
速水にそれを突っ込まれるとは思わなかった。
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