04-2

「終わったか?」
「うん。何の用?」

折原は携帯をスカートのポケットに入れ、隣にきた俺を見上げた。
今は昼休み。
でもあと5分程でそれも終わる。
折原が1人で教室に戻って携帯をいじくりだしたのは、そんなに長い時間ではなかった。

「牧野はどうした?一緒だったじゃろ」
「気になるかい?」

ニヤニヤ笑った。
何じゃこいつは。
俺を試しているのか?馬鹿にしているのか?

「おいおい睨むなよ。おっかないなぁ」
「…すまんの」

心のこもっていない謝罪をした。でも折原はそんなの気にしていないらしい。

「で、牧野さんだっけ?まだ生徒会室かな」
「生徒会室?なんで」
「ああ、あの子君たちのマネージャーしたいんだって」
「はぁ?」

自分でも大きな声がでたと思う。
折原は教科書を取りだし、また俺をみて、にっこり笑った。

「よかったね。あんな可愛い子がマネージャーするかもしれないなんて」
「…嘘じゃろ」
「どうかな?どこまで信じる?」
「……」


言葉がでなくなった。
そんな俺を見て、また折原はクスリと笑う。よく笑う奴だ。

「まぁ私の言う言葉なんてだいたいが嘘だしね。自分で聞いてよ」
それが狙いか。
俺を、牧野に近づけるための。
つくづくムカつく奴じゃ。

「ちょっとええか」
「何?」
「お前さんのこと、名前で読んでもええかの」
「ご自由に」

随分アッサリした答えだった。てっきり嫌な顔一つするか、「干渉しないで」くらいのことを言われるかと思っていたのに。

「心亜」

早速呼んでみた。

「何?」

何事もなく、心亜は返事をした。
呼んでみただけ、なんて言えるはずもなく、俺は必死にネタを探す。

「さっき携帯で何しとったんじゃ?」
「チャット」
「チャット?」
「何?珍しいかな」
「いや、意外だと思うての」
「チャットぐらいするよ」

そういってまた携帯を取りだした。
そして何故だか、それを俺に突きつけた。

「頼みたいことがあるんだ」
「は?」
「私の携帯で、隣の席の牧野まなかさんの写真を撮ってもらいたい」

おいおい待て待て。
それって

「盗撮じゃなか」
「私が撮るから盗撮なんだ。君は真正面から撮らせてもらってよ」
「おいおい…無理じゃて」
「君なら撮らせてくれるよ。大丈夫、シャッター音は鳴らないし、駄目なら盗撮でもいい」

なぜだかトントン拍子に話が進んでいく。

「やるとは言っとらん。第一俺は関わりたくない」
「隣の席になった時点でそんなこと言えないよ。名前呼びとの等価交換だ」

ああ、成る程。
可笑しいとは思ってたけど、これが狙いか。

「……つくづく、お前さんとは気があわんの」
「お互い様だよ仁王くん」

ニヤニヤ笑う心亜に、早くも俺は奴の手駒にされたのかもしれない。






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