03-1

生徒会室。
そこは文字通り、生徒会役員のみが入室する部屋である。
こじんまりとした部屋には、長机、パイプ椅子、ホワイトボード、その他小道具と書類が隠すように置かれている。

「昼休みってのに延々と生徒会の仕事ってのもどうよ柳」
「…放課後やるのが嫌で今やっているんだ。壮行会のプランくらいたてろ速水」

そんな教室に男女が向かいあうように座っていた。
ホチキスの音に耐えかねたのか、生徒会長速水マツリが同じく生徒会3年の会計、柳蓮二に話しかけた。
だが柳は手を止めない。会話をする気はないようだ。

「おま、立場わかってんの?私会長」
「所詮置物会長だろう」

と、涼しい顔で柳は言う。
マツリは頬杖をつき、ハッ、と鼻で笑った。

「そんなこと言ったら今日あった素敵な出来事トップ3教えないぞー」

そう言うと、柳の手が止まった。
マツリはムフフ、と笑う。
その笑い声に気付き、柳は手を止めたまま顔を上げた。

「何かあったのか?」
「あったあった」
「朝の騒動と関係してるか?」
「してるしてる」

トントン拍子に会話が進んだ。これはお互いに「朝の騒動」とやらが何なのかを理解しているからである。柳としては詳しい話を聞きたいところだが、我が生徒会長は爪をいじりだした。
さっきの態度が気にくわなかったのか、はたまた話す必要がないと感じたのかはわからないが、どうやら話す気はないらしい。

柳がまたホチキスを手に取って、紙を束ねた。
その紙の音で気付いたのか、マツリはあ、と声を上げた。

「心亜が、転校生に手ェ出した」

柳の手がまたもや止まった。

「…昨日の書類のやつか」

ふむ、と呟き柳はポケットからメモ帳を取り出した。
昨日、生徒会顧問が特別に見せてくれた転校生の書類の一部が、そこにメモされていた。

「うん。想像以上の破壊力にマツリさんびっくりだよ」
「牧野まなか…か。命知らずだな」
「喧嘩売ってさぁ。丸井とあたしが止めなかったら今頃右の眼球は使い物にならなかったよ」
「…怖いな」
「それが心亜だよ」

クスクス笑うマツリは、大分折原心亜に浸透していると柳は思った。
速水マツリは頭はキレるが折原心亜はそれ以上。
凡人ではない。

「仁王の隣の席だよ。知りたかったら仁王に聞きなよ」
「ああ、そうする」

説明するのに飽きたのか、マツリはここにはいない不憫なクラスメイト、仁王に丸投げした。

「じゃあ今日あった素敵な出来事トップ3堂々の第1位を発表します」
「ああ」

急ぐ気持ちを抑え、柳は冷静を装いながらマツリが話しだすのを待った。




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