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私の目の前で頭を抱え首を傾げる日吉くんは、どうやら少しは使える奴らしい。
出会いがどうであれ、まさか私が彼のような奴に助けられるとは思わなかった。

観察眼、とは少し違う。
推理力、とは言い難い。
なんていうんだろうなぁ、こういう奴は。

「日吉くん」
「え?ああ…はい」

悩む彼に、私は次の質問を投げ掛ける。
日吉くんはまだ整理ができていないようで、眉間にしわを寄せていた。

「君は今日ここに、デュラハンを見にきたの?」
「そう、です。…なんか、興味本意で」
「行動力あるねぇ」

そういうわけじゃないですよ、と言うと、照れ隠しでコーヒーを飲む。
ふぅん、なるほど。果敢で敏感で純粋な年頃ってわけだ。

「…そういえば、折原さんはなんで池袋に?」
「遊びに来ただけだよ。でも、まさか出掛け先でこういった出会いをするとは思わなかったな」
「…あの、からかってますよね」
「どうだろう。私、思ったことすぐ言っちゃうから、誤解させたらごめんね」
「してないです」

怒ったのか、静かにグラスを置いて、また頭を整理し出した。

綺麗な顔してるなぁ。
いいよなぁ、中学二年生。さぞ毎日楽しいことだろう。
私が二年の時なんてつまらないしくだらないし、死にそうだったなぁ、なんて、自分の生い立ちを延々と語ったたところで誰も理解してくれないし思い出すだけ無駄なので、私はまた次の質問を投げ掛けた。

「日吉くん」
「はい?」
「ダラーズについてはあまり詳しくないようだけど、興味ないの?」
「人間ですから」
「え?」

すると彼は目を細め私を見た。

「デュラハンは妖精じゃないですか」
「うん、そうだね」
「だから…人間のカラーギャングにはあまり…ワクワクしないというか、あまり気にかからないというか」
「あ、つまり君、オカルトマニア?」
「マニアかどうかわかりませんけど、興味あります」

断言する日吉くん。
あー、なるほど。つまりこいつ、今はデュラハンにしか興味ないのか。

確かに彼は今、人間とそれ以外を区別する言い方をした。そこらへんの線引きはできているらしい。

じっ、と、また日吉くんを見る。
目があったとこでまた私は目を逸らし、ストローで氷をつついた。

まぁ、私がダラーズについていろいろ吹き込んだとこでどうなるわけでもないんだよなぁ。
でも、どうにかして彼をこっちに引きずりたい。きっといいサポート役になるだろうし。

携帯電話をとりだし、チャット画面に接続した。

「日吉くん」
「…なんですか」
「このサイトなら、きっと君の役に立つよ。携帯電話出して。教えてあげる。ちなみに私の連絡先も」
「連絡先って…」
「いいじゃん、友達になろうよ。恋愛相談とか相手になるからさ」

私が笑顔でそう言うと、嫌々ながら携帯電話を開いた。
同時にため息をつかれ、私はまた笑った。





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