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雨がポツポツ降ってきた。練習を開始してからまだ二時間も経ってない。

「跡部、どないする?」
「この天気だ。本降りになるまでまだできるだろ。それか監督から何か指示があるはずだ。それまで続けろ」

それから15分後、雨はとうとう本降りになった。

監督がやって来て、練習は一時中断。トレーニングルームで10分後練習を再開することになった。
氷帝の揃いすぎた設備はこういう時に使える。そこに文句は言えない。

「雨結構すごいなぁ」
「午後はもうずっと雨らしいですよ」
「最近晴れてばっかやったからなぁ。余計に鬱陶しいわ」

忍足先輩は濡れた髪をゴムでくくりながら言った。
外の雨は勢いを増しながら降り続けている。

確かに鬱陶しいが、雨の日は嫌いじゃない。照りつける太陽のほうが、俺は嫌いだ。
じゃあ何でテニス部入ったんだよ、とか言われそうだな。

「せや、なぁ日吉」
「はい?」
「ダラーズって組織、知っとる?」
「!」

俺の何かが反応した。
何故だろう、前にもその言葉を聞いたような気がする。

池袋、黒バイク、ネット上の組織。

「…!」

ああ、思い出した。黒バイクを調べている最中に見つけたカラーギャングだ。

「あれ、もしかして知らん?」
「…一応存在だけは知ってますけど…概要は知りません」
「実はな、日吉があまりにもオモロイ事言うから、俺も黒バイクについて調べてみてん。したらダラーズゆうそれはまたオモロイ組織が出てきてな。ちょっと日吉と語りたいなー思って」

忍足先輩は面白そうに笑った。実際面白いから笑うんだろうけど。
けれど実際、俺はそのカラーギャングを知らない。

「ま、あんま知らないならしゃーないな。出直してきてや」
「なんで上から目線なんですか」
「俺から話聞いてもつまらんやろ。自分で調べることに意味がある」
「…だから何で俺がそのダラーズとやらを調べること前提なんですか」
「お前なら絶対興味持つで。じゃあ、俺が調べた範囲内で少し教えたるわ」

調べるか調べないかは、それから決めや、と言って忍足先輩は壁に寄りかかった。

「ダラーズはカラーギャングや。池袋を拠点としとる。チームカラーは無色。カラーギャングゆうても、普段は何もしない。ただダラーズの一員であるだけ。でも過去何回か現実世界で呼び出しがかかったらしい。なんや理由は知らんけど…調べたら出てくるんちゃう?で、これはあくまで噂やねんけど、結構やばい奴らがおるとかなんとか。ま、チーム内に上下関係もなんもない時点で、色んな奴がぎょうさんおってもおかしくないけどな」
「…それ、本当ですか?なんだか創作じみてません?」
「事実は小説よりも奇なり。せやから自分で調べればええ。ダラーズのサイトがあるらしいんやけど、なんや出てこんかったわ。せやから見つけたら俺にも教えてな、日吉」
「…はいはい」

おおきに、と忍足先輩が言った。

忍足先輩の話を聞いて俺の決心は固まった。
明日、行くか。雨じゃなければ。
雨の日はこの上なく鬱陶しい。




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