突然空から降ってきた女の子。それが彼女だった。
彼女はいつも一人で、他人と距離を置いていた。
なんというか、心ここにあらず、って感じで、不思議な子だと思った。
みんなは彼女のことを異星人だなんて言ってるけど、わかる人にはわかる。
彼女はマグル生まれだ。多分、日本だとか東洋の出身だ。ハーマイオニーもそれに気がついている。
僕がなぜこんなに彼女に詳しいかというと、彼女を初めて見つけたのは僕だからだ。
それはまぁ、追々語るとして。
で、彼女は何があってかレイブンクロー生としてホグワーツにいる。
それについてはダンブルドア校長も教えてはくれなかった。
そして、僕はいつものように彼女を目で追っているんだ。
あれから何も話していない。いや多分、彼女は僕を知らない。あの時彼女は眠っていたしね。
「また彼女を見てるの?」
いつの間にか隣にいたハーマイオニーが呆れたように言った。
「いや、そんなんじゃないよ、ただ」
うまい言い訳が思い付かない。しかもハーマイオニーがじーっと僕を見てるからなおさらだ。
お手上げ状態。
「…うん、見てたよ。だって彼女、不思議なんだ。なんていうか、言い方が悪いけど魂がないみたい」
「確かに言い方が悪いわね。でも私も同意するわ。魔法を学ぶのはこんなにも楽しいのに、彼女、全く楽しむ素振りを見せないもの」
「日本人だからね」
「それ、関係ないと思うわ」
「…ハーマイオニー、あの子と友達?」
「友達ではないけど、何回か図書室で会ったりするわ。本をとろうとしたら彼女もその本をとろうとして、その時初めて目があった。すごくびっくりしてたわ、彼女。そしたら、言葉は交わさなかったけど小さくお辞儀をして私はいいです、って自分から一歩退いたわ。ありがとうって言ったらまたお辞儀をした。日本人って謙虚よね」
「…」
ますます不思議だ。
「それ、どんな本?」
「異世界を行き交う、っていう魔法の本だったわ」
異世界?
もしかして彼女は本当に?
いや、多分ないだろう。
「…もしかしてハリー、彼女に気があるの?」
「いや、そんなんじゃないよ」
「嘘よ。だってそうじゃなければ目で追ったり、こうやってコソコソ後をつけたりしないわ」
「なんか怒ってる?」
「やぁね違うわよ。楽しんでるの。人の色恋ほど複雑なものはないわ」
「……」
なんだかなぁ。
心なしかハーマイオニーの目が輝いている気がしなくもない。
「彼女、いつも図書室にいるの。ハリーちょっと声かけてきて」
「え」
「私も友達になりたいわ。抜け駆けだなんてずるい。頃合いを見計らって現れるから、あなたは場を作っておいて」
「そんな無責任な。君のほうが接点あるじゃないか」
「じゃあ、よろしくね」
背中を押され、僕はしぶしぶ彼女が入ったであろう図書室に向かった。
本当はちゃんとしたシチュエーションで話してみたかったけど、まぁしょうがない。
髪の毛、大丈夫かな。寝癖とかあったら嫌だな。
実を言うと、僕も図書室に来て何度も彼女を見ていた。
彼女がいるから図書室に来ていたと言ったほうが正しいのかもしれない。
もしかしたら、気づいているかな。
気づいていたらいいな、なんて。
彼女はすぐに見つかった。
小さな背丈で、つま先立ちし、腕を精一杯伸ばして本をとろうとしていた。
僕はそこへ駆け足でかけより、横からその本をぬいた。
彼女は隣にたった僕を見てびっくりした顔をした。
「これ?見たい本」
と言って本の表紙を見せた。
「そ、そうです。…あの、見たいなら、お先にどうぞ。私はその、後でいいので」
初めて声を聞いた。
東洋人(だと思われる)なのに、発音がよくてびっくりしたけど。
「あ、いや違うんだ。とれなそうにしてたから、代わりに…。はい、これ」
本を差し出すと、彼女は一回躊躇ったけど、お辞儀をしてから恐る恐る本を受け取った。
「ありがとうございます。助かりました」
「うん。僕は、ハリー・ポッター。君の名前は?」
「……佐鳥。佐鳥みきな、と申します」
そう言って、すこし申し訳なさそうにした彼女の顔を見て、
僕はなんだか胸が痛くなった。
***
ありったけifストーリー。
もしヒロインがハリポタ世界に転生したら。
書いてしまった…。
燃え尽きたぜ。
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