僕の彼女は同性愛者です
『みょうじなまえはレズらしい』

彼女に告白しフラれた男子が広めたその噂の信憑性は不確かなものだったけれど、彼女を疎外させるのには打ってつけだった。もとからどのグループにも所属しない彼女が、そのことを気にするほど弱くないということを、ボクは知っていた。
口数が多い方でもなく、真面目なわけでもない彼女は、紛れもないボクらの仲間の一人だった。
そして、ボクはそんなみょうじさんが好きだった。

でも、彼女は桃井さんが好きだった。

「あたし、レズだから。男子に興味ないの」
「知ってます」
「噂広がってるもんね」
「それもあります。…でもボクは、みょうじさんが好きな人も知ってます」
「…それ知ってて、なんであたしに告白しようなんて思ったの?」

みょうじさんは理解できないと言った目で、蔑視したように言った。

「すいません。…でもボク、本当にみょうじさんが好きなんです」
「嬉しいけど、ごめん。黒子は、無理かな」
「…そう言うと思ってました。ただ、ボクがみょうじさんを理解した上で、みょうじさんが好きだってことを、伝えたかったんです」
「…ありがとう」
「ボクでもいいかなって思ったら、付き合ってください。待ちますから」

ボクがそう言うと、みょうじさんは少し目を見開き、最初と同じように苦しそうに目を伏せた。
そして、困ったように笑ってボクを見た。

「うん、わかった。ありがとう。当てにしとく」
「はい」

それからすぐ、みょうじさんは一身上の都合だと言って、マネージャーを辞めた。
学力低下が響いたから、これからは学業に専念したいと言ったらしいけれど、赤司くんはきっとわかっていたと思う。勿論ボクも、わかっていた。

マネージャーを辞めたことで彼女と桃井さんの接点は無くなった。それと比例するように、ボクとみょうじさんは仲良くなっていった。

「高校、桃井どこ行くの?」
「桐皇って聞きましたけど」
「黒子は?」
「誠凛です」
「…じゃああたしも誠凛だ」
「桐皇はいいんですか?」
「黒子が行くとこにする。ごめん、なんか頼ってばっかで」
「いいですよ、頼ってくれて」

みょうじさんにとってボクという存在は、支えであり、保険だと言われたことがある。
それでもいいと言ったら、彼女はまた困ったように笑う。ありがとうと言う。

敵になった今も、これからも、ボクは桃井さんには勝てないだろう。
でも桃井さんではなまえを幸せにはできない。笑顔に出来ない。悲しませるだけ。それならボクが報われなくてもいい。だから、なまえの支えであろう。

「あたしが男だったら、よかったのにね」

これがなまえの口癖だ。
それを聞くたび、いつも思う。

ボクが女なら。ボクが桃井さんなら、よかったのに、と。


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