僕の彼女は枯れ専です
枯れ専とは。中年以上の男性が好きな女子である。オレの彼女がまさにそうだ。

そんな彼女との出合いは高校の部活。マネージャーと部員の関係から発達した。
その時からなまえは監督を崇拝していた。マネージャーになったのも監督が目的だったらしい。マジか。

なまえに言わせれば、歳上の男性は見ているだけで落ち着き自分を潤わせてくれる一種の潤滑油だという。で、彼氏とは一緒にいると落ち着き、自分と一緒に死んでくれる人のことを言うらしい。
ぶっちゃけオレはそんな覚悟してないけど、とりあえず彼氏の俺と歳上男性の区分はつけているらしい。

「中谷先生、予習でわかんないとこあったんで、練習終わったら教えてもらってもいいですか?」
「ん?ああ、わかった。ノートと辞書と参考書持って来てくれたら教えるよ」
「ありがとうございます!」

…と、思いたい。

オイオイ何ですかその笑顔。完璧恋する乙女の顔じゃん、オレの立場どうなんのちょっと!
予習でわかんないとこあんならオレに聞けよいやオレ予習してないけどさ。

高尾くん、と笑顔で駆け寄ってくるなまえを呆れた顔して迎える。

「…ほんっと監督のこと好きだよな」
「だから好きじゃないって。かっこいいから見てたいだけなの」
「ならオレ見てればよくね?」
「え、ふざけてんの?30歳くらい老けてから言おうか。わたしの鑑賞用としては高尾くん若すぎ」
「んな真顔で…」

そこは嘘でもやだもうばかぁなに言ってんの、みたいな演技してほしかった。
まぁなまえがそんなキャラじゃないってのはよくわかってるけども。

なぁ、と声がした。オレの後ろで座って休憩してる宮地さんがよいしょ、とは言ってないけど立ち上がった。

「みょうじってもし監督に告られたらどうすんの?」
「高尾くんにバレないように二股して、不倫します」
「それは流石に冗談だよな?」

はっきりした受け答えに若干焦ってなまえと顔を見合せたら、なまえはなにも言わずにこりと笑うだけだった。
宮地さんをみたら、ざまぁと書かれた顔で笑っていた。

「よく2ヶ月もったな、お前ら」
「いや、ねー…ホント」
「監督がいいなら彼氏いらなくね?なんで別れねーの?」
「いや宮地さん、そんなズバッと言わないでくださいよ」
「監督は鑑賞用ですから」
「じゃあこいつは?」

オレを指差す宮地さん。
なまえは再度オレを見て、んー、と数秒考え込んだ。

「実用じゃない?」
「へっ」

予想外の返答に間抜けな声が出た。
その場が水を打ったように静まり返る。

「えっ…実用?」
「?うん」
「それってつまりその」
「これ以上喋んな轢くぞ」

宮地さんが舌打ちした。


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