僕の彼女はブラコンです
「ごめんね鳳くん、土曜日は先約があるの」

ふふふ、と嬉しそうに笑う先輩。これはもしや、と嫌な予感がした。

「弟がね、帰ってくるの」
「そっ…れは、大変ですね!俺と遊びに行ってる暇なんかありませんよね!」

自分で言ってて悲しくなってきた。ピシャリと何処かにヒビが入る音がした。

こんなに嬉しそうな顔、自分では絶対させられない。彼氏のくせに。弟、かぁ。仕方ないよな、きょうだいだし。

「おいそこのブラコン女。弟なんか構ってないで鳳を優先しやがれ。彼女だろ」
「鳳くんももちろん好きだよ?でもね、3ヶ月ぶりに帰ってくるんだもの。そんな言い方酷いわ跡部くん」
「酷いのはテメーだ。大体テメーがそんなんだから弟も自立したがってんだろーが」

先輩と昔から親交がある跡部さんの話では、昔から先輩は度が過ぎた弟好きで、それがこうじて弟さんは寮のある学校へ行ったそうだ。
そして今がこの有り様、だと。

先輩の彼氏になるのに覚悟はしてたけど、毎回毎回こうされると、すごくへこむ。

「そんなことないわ。ちょっとした反抗期なのよ。母がいないから甘え方を知らないの。困った子でしょう?」
「は、はぁ…」

すごいな先輩。盲目の愛情とはまさにこのことか。
俺が感心していると、跡部さんは静かに舌打ちをしながらコートに行ってしまわれた。

先輩はそんな跡部さんを見て、はぁ、とため息をついた。

「ごめんね鳳くん。跡部くんの言うことはもっともだわ。でも、弟のことは弟として好きなの。異性として好きなのは鳳くん、あなただけよ」
「そ、それは俺もわかってます!…でも、やっぱりちょっと妬きます、ね。同じ男だし…すみませんなんか、変なこと言っちゃって」
「ううん。嬉しいわ。…はぁ、弟も鳳くんみたいに素直ならいいのに。…なかなか好きって言ってくれないの」

俺には胸に刺さるような言葉だ。
悪気はないのだろうけど、弟と比べられるのは、やはり悔しい。

「だ、駄目です」
「え?」

俺は咄嗟に先輩の手を掴んでいた。先輩は不思議そうな顔をしている。

「せ、先輩に好きって言うのは、俺だけでいいんです」
「…」

目を見て言った。
先輩は目をぱちくりさせて、そのあとすぐに微笑んだ。

「うん。鳳くんだけでいいわ。家族なんだもの、言わなくてもわかるものね」
「!いやっ、そうじゃなくてっ…」

後ろでまた、跡部さんの舌打ちが聞こえた。


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