僕の彼女はアニオタです
「帰りにコンビニ寄ろう」

まさに無心。目が本気だった。何事だ…と誰かが呟いて、俺はラケットケースを背負った。

「いいよーん。なに買うの?」
「一番くじに決まっているだろうボケが」
「…」

聞き返しただけなのにボケって言われたんだけど。しかも凄い目力で。

「なまえさぁ…。毎度毎度くじ引きに行くけど、そのお金はいったい何処からきてるの?」
「兄貴に借金してる。ほら行こうぜふっふー!」
「あーはいはい…。みんなじゃあねー」

おーう、と間延びした声をちゃんと聞き終える前に、なまえに連れられ俺は部室を出た。

俺の彼女はオタクです。月に何万使ってるのかわからない、重度のオタクです。

俺がこんな(女の子大好き)でも付き合っていけるのは、なまえが二次元に没頭しているからだと思う。
女関係に口出ししないからあんたもあたしの趣味には口出ししないで、でも彼女なんだからあたしのこと優先してね、と告白した時に契約に誓い約束をして今に至る。
当時はなんで妬かないんだろとか思ったけど、妬かなくて当然だ。
なまえの言葉を借りるなら、彼女はたくさんの「嫁」がいるから妬かなくて当然というか、妬く暇がないのだ。それに気づいた時、俺はどうしようもない独占欲に駆られた。

それからというもの、画面の中や紙の中のキャラクターに焦りと不安を覚え、何事もなまえ優先になったけど、なまえが俺を頼るのは、グッズの荷物持ちだとか買い出しだとかの、「嫁」関連のものばかりだった。

それでも俺はなまえの笑顔が見たいから、毎回こうやって連れられている。

さて、今回はコンビニの一番くじだ。

行ってくるぜ、と言って3000円を見せびらかしながらレジへ向かったなまえ。それを見届け、俺は店内をプラプラする。
どうせなら食べながら帰ろうと思い、アイスの棚に向かった。何にしよっかな。

「なに?アイス買ってくれるの?」
「!あ、終わったの?どうだった?」
「ストラップとバッジとカード。お目当てのフィギュアは無理でした」
「…」

まだ希望はあると言った目で俺を見つめるなまえ。
まぁこうなるとは思ってた。俺の幸運を、彼女はここ一番ってところで自分の為…いや嫁のために有効活用する。

「わかったわかった、この彼氏、清純様に任せなさい」
「ヒューさっすが!ありがとう!」
「その変わり、土曜日遊びに行こうね」
「えっ、アニメイトに?」
「映画だよ!」
「ポケモンみたい」
「ダメッ!ラブロマンス見るの!」
「えぇ〜…まぁいいよ。A賞のテツくん当ててくれたら」
「くっ、俺なんかまだ名字呼びなのにっ…」
「じゃあキヨくんって呼んであげるから。さぁ、行ってきておくれ!私の為に!」
「なまえの為にね!行ってきます!」

なんとも、調子のいい彼女である。


まぁ、大好きなんだけどね。


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