刑事の仁王と探偵のシアンは業界からは名の知れたカップルで有名である。
なんやかんやで仲のいい二人なのだが、二人の間には常に食い違いが生じていた。それは、仁王のシアンを思う心と、シアンの自分を優先する心が、相容れないからだ。

「じゃあ後でそっち行くから。まだ朝ごはん食べてないの」
「絶対に来るな。っていうか、来させん」
「どうせ幸村が頼ってくるよ」

そう言ってその場を離れ、広場にある血だまりに向かって足を進める。
仁王も後を追い、テープの向こう側にいる謙也を睨み、こっち来い、とジェスチャーで伝えた。謙也は目を逸らしてからテープを越えてこっちにやって来た。

何かを探すように血だまりを見つめるシアンを横目で確認してから、仁王は謙也と合流し、ぐい、と肩を掴んだ。

「お前…」
「いやだって…最近大した仕事なかったし…。この前起きた事件となんか関連あんのかなって」
「そういうのは俺たちに任せて、シアンには行方不明のペットを探させたり、雑誌のクロスワードパズルでも与えとけばいいんじゃ。こうやってずかずか入って来られたら困る。俺のメンツもあるし」
「わかった、わかった…。いや、スマンな。でもシアンは上司やねん。もちろんお前のこともわかってるつもりやけど、アイツつほっとくと何しでかすかわからんねん。な?察して?」
「……」
「…スマン。連れて帰るわ」
「そうしろ、是非」

仁王から離れてシアンのもとに向かった。

この二人の間で揺れているのが謙也だった。
シアンの唯一の助手である。またシアンを煙たがる一部の刑事から、シアンの目つけ役を任されているのが彼なので、結構大変な役割を果たしている。
仁王の彼女を大切にしたいという気持ちも十分理解しているが、仁王を優先するとシアンがふて腐れ、シアンを優先すると仁王に睨まれ、彼は本当に大変な人なのだ。

「シアン、仁王たちに任せておいとましようや」
「んー…。………そうだね帰ろっか、ポストに手紙入ってたし、そっち片付けよう」
「なんや。今日は聞き分けのいい…」
「これくらいなら、私の手を貸さなくてもいいでしょ。じゃ、刑事さん頑張ってね」

仁王に投げキッスをし、シアンは帰っていった。謙也もその後に続く。
仁王はそれにどうしようもなく、ムカついた。

「おや、帰ったんですか、シアンさん」
「当たり前じゃ」
「いいじゃないですか、一緒に仕事ができるのだから」
「デスクワークならそれも頷ける。殺人の犯人探しなんてやってられん」

柳生は、そういうものですか、と呟き、腕時計を確認した。

「この具合なら、会議は何時からでしょうね」
「まだ身元が割れてない。そこから片付けるぜよ」

仁王はそう言って、ラボにいるジャッカルに電話をかけた。




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