くたばりかけてた私を拾ったのはキッド。本人曰く「使えると思った」「暇潰し」で拾ったらしい。
優しいのかそうでないのかわからないけど、私がもし子供だったらこいつは見て見ぬふりするんだろうな、とこのどこまでも続く海を見て思った。


「楽しいか?」


後ろから声がした。
いたのはキッドだった。私に話しかけるなんて珍しい。


「…まぁ、楽しいよ。私がいたとこ、海なんてなかったし」
「それはつまらねぇ世界だな」
「でも退屈はしなかった。アンタと同じで、私らも目的があったからね」
「その刀でか?」
「この刀でだ」


斬魄刀の鞘に触れた。
私の返答が気に入らなかったのか、キッドは顔をしかめた。


「わかんねェな」
「は?」
「そんな大層なモン腰にかまえてるくせに、テメェには覚悟がねぇ。今オレら全員がテメェを殺そうと襲いかかっても、テメェはオレらを殺さねぇだろ」
「……そうだな」
「何故だ」


睨み付けられた。だいぶお怒りらしい。
まぁ無理もない。
危険と隣り合わせの海賊船で命を落とす、落とされる覚悟のない私がいることが気にくわないのは誰だって同じだろう。

でも、私は人は殺せない。


「悪いな」
「……」
「私は、殺さない」
「何故だ」
「だってお前ら、人間だろ」
「アァ?」
「人間を殺すことはできない。例え能力者だろうが一般人だろうが、私には無理だ。ほんと御免な。戦力にはなれない」
「それはオレが決める。現にテメェの実力に敵う奴はこの船じゃオレとキラーくらいだ。でも覚えとけよ、死神。人を殺せないなんてくだらねぇ理由でお前が死にそうになったら、オレがお前を殺す」
「くだらなくなんかないよ。美徳だろう?」
「ほざけ。テメェがこの船にいるなら、テメェはもうキッド海賊団の一員だ。オレの意に背くなんざ許さねぇ」
「…なんでそこまでして私にかまうんだ?」
「強いからだ。他に理由なんていらねぇだろ」


それはそれは、また期待通りな。
ほんとにこいつ力しか頭に無いんだな。

…なんか更木隊長みたいだな。でもあの人より常識はあるのか。斬りかかってこないし。


「…強い、ねぇ。まぁ実際の私とアンタらじゃ強いなんて差じゃないと思うよ」
「ほう…。随分慢心じゃねぇか」
「キッドが死神だったら違ってただろうけどね。…まぁ、いつか見せるよ。私の本気」
「ハッ。勝手に言ってろ」


そう言うとキッドは踵を返した。

ははーん、あの顔は信じてない顔だったね。
まぁ私も、本気出せるとは思ってないけど。




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