明日はお天気 | ナノ

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21#休み時間


アンナは朝教室を出てったきりここに戻ってない。三時間目の授業終わり。
クラスの奴らもアンナちゃん教室来えへんのー、と、朝一緒に教室を出た寺本たちに聞いている。
聞き耳を立ててみると、どうやら今日1日、一年生と一緒に体育館で説明やらなんやらを聞いたりして、昼休みには戻って来るらしい。でも午後の授業は出ないっぽい。大変やな。

教室前の廊下も、転校生を一目見ようと老若男女がうじゃうじゃしていた。

自販機行こう、とカバンから財布を出そうと群衆から目を逸らそうとしたら、包帯が巻かれた腕が視界のすみに映った。部長や。え、あの人も見に来たんか。

人混みをかき分け、教室に入ってきた。俺と目があうと、いたいた、といった表情でこっちに来た。

「あーおったおった」
「はぁ…なんかあったんです?」
「今日の昼休み、1時に部室集合な。ミーティングや」
「ミーティング?放課後じゃ駄目なんスか?」
「放課後は俺おらんから、昼休みやないとあかんねん。放課後に明日やる部活動紹介の部長会議やから」
「ああ…」

部活動紹介とはその名の通り部活動紹介で、午後の授業丸々使って体育館で各部活がオリエンテーションをする。
オリエンテーション言うても、いかに新入生を笑かして部活に勧誘するかを競ってるようなもんで、真面目に紹介してる部活はほとんどない。
ちなみに俺のときのテニス部はテニス部が舞台の新喜劇だった。
今回は何する気やろ。

「まぁ、わかりました。1時っスね、了解。他の奴らにも伝えときます?」
「いや、ええで」
「そっスか」

カバンのファスナーを開けて財布を取り出す。が、なかなか部長は帰ろうとしなかった。

「…まだ何か?」
「あ、いやな、転校生の子見たかったんやけど、おらんみたいやな。んー、残念。今度紹介してな」
「なんで俺が」
「やって俺、このクラスに後輩お前しかおらんし。…あ、せや。俺と謙也同じクラスやから用があったら2組にな」
「了解っス」

立ち上がり、一緒に教室を出る。
廊下を歩きながら部活動紹介のことを聞いた。今年は陸部と野球部が力を入れてるらしい。確かにクラスの陸部男子が、アフロを被ってた。
力入れる方向違うやろ。

「んでバド部は寸劇やるって言うてたなぁ」
「寸劇て。女子なのに」
「イケメンな男子マネージャーを勧誘したがってたで。ええなあマネージャー。ウチも作るか」
「いらんやろ」
「せやな」

なんて他愛のない話をしてると階段に差し掛かり、部長と別れた。
俺は階段を下りて自販機へ向かう。ああめんど。各階に置いとけや。

チャイム1分前だからか、人は少なかった。
チャリンチャリンと小銭を入れてボタンを押す。ジュースを取って来た道を戻ると、光、と名前を呼ばれた。

振り向くと、保健の先生とアンナがいた。

うわ、びっくりした。

そんな俺の表情に満足したのか、アンナはにこっと笑って手を振り、先生と多目的室に入っていった。

扉が閉まるまで見ていたら、授業開始のチャイムが響いた。

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