▼ 20
「なんやねん蟻に菓子って…厨ニか!」
「アリカ様リスペクトしてんねん!なんか文句あるかコラ!」
コテハンのことを聞くとそういうことらしい。
20#発覚
説明しようアリカ様とは。アリプロで有名な宝野アリカ様のことである。俺も好きや。ギアスとローゼンの曲しか聞いたことないけど。
「で、蟻に菓子か」
「はなの華でもよかったんやけどお姉に菓子のほうが書きやすい言われたから、菓子にした」
「お姉?姉貴おんのか」
「24歳」
「うわっ」
以外と年いっててビビった。変な声でてもうた。
「姉妹なん?」
「兄貴もおるで。19歳」
「うわっ」
「なんでいちいちうわっ、やねん」
「いやびっくりしたから」
でもしっくりくるのはなんでやろ。
じゃあこいつ末っ子か。
「で、さっき何書いてたん」
「お前こそ何描いてんねん。セイバーとかギルガメッシュ描けや」
「今切嗣がアツい。で、何書いてたん?」
「曲の歌詞のプロットみたいなやつ」
さっきの授業で書いてたルーズリーフを寺本に渡すと、興味深そうにそれを手に取った。
「へぇ、こうやって作るんや」
「俺はな。なんか案だして」
「案〜?…フランスが舞台…ならアンナのほうが詳しいやろ」
寺本はそう言って紙を返した。
それを受け取り、また俺は構想を練る。そういえば俺が今まで作った曲って、ミクで歌わすことを考えてたから歌詞が歌に関することばっかやったな。僕は歌うよ風と一緒にとか、一緒に歌おう手をとってとか。しかも全部バラードやし。
考えれば考えるほど、今回のテーマに沿った歌詞や曲調が浮かんでこない。
「曲って全部財前一人でやっとんの?」
「ん?ああせやな」
「すっご…。フランスがテーマみたいやけど、やっぱりアンナに影響されて?」
「わからんけど多分そうやと思う。これはアンナにも手伝ってもらおうと思ってる」
「おお、合作か!ええやん!」
「アホ、まだあいつがボカロ知っとるかもわからへんのに」
「え?アンナボカロ知っとったで」
「はぁ!?」
思わず振り向いた。でかい声も出た。なんやて工藤。間違えた寺本。
寺本は驚いたのかうぉっ、と声をもらし、なんや知らんのかと言った。知らんわ初耳や。
「初めて聞いたボカロ曲は『ぽっぴっぽー』で、リンちゃんが好きや言うてた」
「まじで」
「まじで。フランスでも人気で、友達が動画サイトに投稿したとか言ってた」
「まじか。お前そんな…いつ聞いてん、そんな話」
「別室に案内する時。めっちゃテンション上がったわー。オタクってやっぱりグローバルやな」
寺本がにこにこ笑いながら言った。
アンナがボカロを知っていた。その事実だけでも好印象だった。
これはやっぱりいけるかもしれへん。
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