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「アンナちゃん!」
「!」
「おはよう。私、寺本あかり。仲良うしてな」
「…!ハイッ、よろしくデス」
「よろしく!えっと…アンナちゃん、どこに引っ越してきたん?」
「えっと…光のウチのすぐソバ!」
「!?」
あのアホゥ…。
16#アップダウン
さらっと吐露されたご近所付き合いに寺本はやっぱり驚いていた。
「えっ、そうなんや」
「ハイ!昨日もお世話にナリまシた」
「へぇー…」
ええから、それ以上言わんでええからなアンナ。
「ところでアンナちゃん、何部入るん?あ、部活って知ってる?」
「モチロン!学園マンガやスポーツ漫画の鉄板デスよね!ワタシも何かシたいと思ってまシた」
ナァーイスアンナ!回避!昨日の事件回避!と、一人心の中でガッツポーズした。
「あ、私な、美術部入ってんねん。部活はいつも自由参加やし、どう?放課後、見て回らん?」
「ホウカゴ?」
「うん。授業終わったら」
「ゼヒ!」
「よっしゃ決まりな!」
と、ガールズトークが弾んできた。寺本めっちゃええ奴やん。そっかあいつ美術部か…。…あ、思い出した。去年、文化祭の展示でイラストやらなんやら描いてあったスケブ一冊展示してた奴やん。あまりに衝撃的やったから名前覚えてたんやった。
まぁ、いい友だちができたみたいやし、良かったやんけ。
「いつも朝何で来てんの?」
「今日はクルマ。明日から歩きデス」
「帰りは?」
「光に送ってモライマスー」
「「!?」」
寺本だけでなく俺も驚いた。
はっ、えっ、ちょっww聞いてないwwとかふざけてる場合じゃなくなった。
なんやのそれ意味わからん。
「ちょっと待てアンナ、なにそれ聞いてへん」
「!」
急いで俺もアンナの席に行った。
寺本もびっくりしてる。でも絶対俺んほうがびっくりしてる。
「おとーサンが、『帰りは光くんに頼んだから、一緒に帰るんだよ』って…」
「たのっ…え!?聞いてないんやけど!?」
するとタイミングよく俺の携帯が鳴った。やば、マナーモードにすんの忘れてた、と思って携帯をみたら、父からメールが来てた。
嫌な予感がしながらもメールを開くと、絶句した。
アンナちゃんの親父から、帰りは一緒に帰ってきてやってほしいって頼まれたから、そういうことで。 敬具
「…」
「…」
メールが横から見えたのか、寺本も黙っていた。
…どないせーっちゅーねん。
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