▼ 08
あの自己紹介をしたにも関わらず、ホームルームが終わると小野寺の回りにはオタク、非オタク問わず、女子がうじゃうじゃと取り囲んでいた。
男子もその光景を遠目に見ていた。
若干引いているようにも見えるが、オタク男子はニヤニヤ笑っていた。
俺はというと、頬杖をついてツイッターをしていた。
08#実況
厨2善哉@Jyaizeeen
金髪、超人気者ワロタ
いや、ホンマ呟いてしまうくらい人気者やねんて、アイツ。
フランスのどこ住んでんのー、フランス語喋ってー、日本語上手いね、オタクなの?
離れていても聞こえてくる女子の声。
んないっぺんに喋ったら金髪やって困るし、聞き取れないやろなに考えてんねん馬鹿なの?死ぬの?
厨2善哉@Jyaizeeen
べっ、別に話したいとかそんなんじゃないんだからなっ!
家が近いんだぜとか、言いたいわけじゃないんだからな!
自分でもなにアホなこと呟いとるんやと思ったけど、とりあえずツイートしておいた。
小野寺はあたふたして、どうにかしてコミュニケーションをとろうとしているのが見えて笑えた。
「ミンナ喋るの早いデスヨー。聞き取れナイー」
「あっ、ごめんな!アンナちゃん!」
「大丈夫だ、問題ない」
「ブッ!?」
俺はあまりにも悠長でその場にあわないその台詞に、噴いた。
ネタがわかった奴らも皆一様に笑いを堪えた。
俺も慌てて口を押さえ、息を整える。
クッソワロタ、何ゆっとんねんあの女、意味をちゃんとわかってから使えや。
「…?アニメの台詞かなんか?」
「ゲームデス!エルシャダイ」
「えー、わからんー」
「アンナちゃんホンマにオタクやねんな。冗談かと思っとったわー」
あははははー、と能天気で有頂天な笑いが巻き起こる。
まさかまさかの展開だ。
心配する必要はなかった。
厨2善哉@Jyaizeeen
美人でハーフでオタクって、得やなぁ
「…っちゅーか、何で俺は実況しとんねん」
そろそろ馬鹿らしくなってきて、スマホを仕舞ってあくびをした。
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