氷帝
どうやら、忍足の言っていたことは本当らしい。

体育館。いわゆる朝礼。全校生徒を前にして、朝会った女(名前忘れた)は壇上にあがって挨拶と言う名の自己顕示をしていた。

タチ悪い金持ちは自分のことを誇張して言うってのは、あながち間違いじゃないらしい。ホクロの前例もあるし。

「前の学校では生徒会長でした。なのでー…」

っつーか話なげぇし。誰も聞いてねぇって。んな話。
氷帝のやつも黙って話聞いてんなよ。なにさも当然のように突っ立ってんだ。

都会に来てから、地元の雰囲気がどんだけよかったか思いしらされる。

「ちなみに、私の家は生徒会長である跡部くんの分家でもあります」

その一言で皆ざわつき始めた。
跡部んちの分家…ね。どうりで嫌気が差すわけだ。

俺の前にいる宍戸が振り向いた。

「聞いたか?跡部んちの分家だと」
「苗字ちげーじゃん」
「いとこ?はとこか?」
「なんで俺に聞くんだよ。知るかっつの。興味ねーし…」

それより寝たい。

「ま、跡部嫌いなお前はあの転校生ともつるみたくねーよな」
「それがな宍戸。不運なことに朝あの転校生と遭遇しちまった」
「げぇっ、マジかよ」
「かなりの変人だった。関わらないことをおすすめする」
「ま、関わることもないだろ。話聞いてる限りじゃ卒業までいるかも疑問だし」

話を聞いてなかった俺はどういうことだか意味わからなかった。が、特に不思議にも思わなかったのでそれ以上は追求しなかった。

「クラスもどうせハイパー特待生クラスのAだろうし」

ちなみに氷帝は成績優秀者のみで構成される特待生クラス、A組がある。
その他の生徒はBからHまでランダムに組分けされる独自のシステムをとっているらしい。最近知った。
ちなみにA組には跡部もいる。成績は学年トップらしい。それは認める。

「顔と家柄がいい奴って不思議と頭もよく見えるから不思議だよな」
「でも人間性に少しばっか問題がある」
「さすが宍戸よくわかってる」
「お前より跡部と付き合い長いからな。嫌というほどわかってら」

宍戸はひそかに跡部に対して苦手意識を持ってると思う。

「では、これからよろしくお願いします」

どうやらやっとあの長い演説が終わったらしく、壇上の転校生は一礼をした。

拍手が起こり転校生は壇上から降りていった。すると今度は進行役の先生がマイクをとった。

「えーではね、須崎さんのクラスはC組になります」

その一言で俺も宍戸も、いやC組全員が固まった。でも多分芥川は寝てる。

「では皆仲良くするように」

そんな俺らなんていざ知らず、我がクラスの担任はお決まりのセリフを言った。

こんにちは地獄。