テニス部の練習は、長引くことが多い。
球を追いかけることに夢中になりすぎて、ナイターに延長することだってある。
ただ度が過ぎればオサムちゃんからお前らさっさと帰らんかいと檄(げき)を飛ばされることもある。

練習が終わればコートを整備して、部の日誌を書いて、着替えるのは面倒くさいんでジャージのまま、俺を待ってくれていた名前と一緒帰る。

最初、早く帰ってええんやで、と促したけれど、名前は迷惑じゃなければ待ってでも一緒に帰りたいと言ってくれた。
凄く嬉しくて、あれからよっぽどの用がなければ一緒に帰ることにしている。

名前が抱える悩みも知らず、俺は毎日が楽しかった。



「土曜日、両親に会ってほしいんだけど」
「………うん?」

名前が気まずそうに言う。
俺は頭で復唱する。

両親に、会って、ほしい。

「…いや、あの…え?両親にって…名前の?」
「うん」
「…いや、俺らまだ中学生やし、そりゃあ俺かて名前のこと好きやけど、まだ、その、早いやろ」
「会わないと、私たち別れることになるかもしれない」
「…どういうことやねん」

名前は深いため息をつき、実はね、と重い口を開いた。

今年大阪に引っ越してきた名前。
名前の親父さんは、大阪に引っ越してきてから名前の帰りが遅くなっていることに心配というか、納得がいかないらしい。

お母さんのほうから名前は彼氏、つまり俺の部活の帰りを待っているのよと説明したらしいが親父さんは信じておらず、「悪い奴らと遊んでいるのではないか」と信じて疑っていないらしい。
大阪に来てから名前の携帯料金が上がったのも関係しているらしい。
それぶっちゃけ、俺とのやり取りのせいやと思う。

で、昨日名前は親父さんに直接彼氏がいると言ったのだが、それでも信じてもらえず、「だったら彼氏を連れてこい」と言う始末。

名前は泣く泣くそれを承諾したという。
なんか俺の知らんところですごい話になっとるなぁ。

「…でも、もしお父さんが蔵ノ介に「娘と付き合うならテニス部辞めろ」なんて言ったら嫌だなぁ…。それなら誤解されたままでいいかも」
「いや、俺行くで」
「えっ」
「名前がそんな誤解されて、勘当されたりしたら嫌やし。本当に彼氏がいることを教えたらええんやし。お母さんのほうは俺のこと知っとるんやろ?」
「うん」
「じゃ、会うで。土曜やろ?午後は部活あらんから、夕方頃でええか?」
「…蔵ノ介って、私のこと本当に好きなんだね。なんか感動」
「ちょ、どういう意味やねん」


ということで、土曜日俺は名前の両親に会いに行くことになった。
内心、めっちゃ緊張してる。




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