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「確かに」

折原心亜は封筒の中身を確認してから自分のバックの中に入れた。
封筒の中身は紙幣。
だが、何百万だとか中学生には非現実的な額ではないのは確かである。

「延長料金もあるけど、どうする?」
「結構よ」

女が言うと、心亜はクスクスと笑った。

女の目には活気が無かった。あるのは行き場のない虚無感とどうしようもない、罪悪感。
彼女こそが、この自体を起こした黒幕であった。

「…ひどいのね、あなた」
「そうかな?」
「あんなことする必要性、なかったじゃない。それに私を自白させてくれない。…彼らが、可哀想よ」

「マネージャー」というワードは出てこなかった。
彼女にある罪悪感は、テニス部だけに向けられている。
つまり花園美咲などどうでもよかったのだ。いや、どうでもいいというわけではない。
花園美咲には、この状況を望んでいただけだった。願ったり叶ったりというわけだ。

「君が自白したところで何になる。全校生徒を敵に回した彼らを、そんなことして助けられるとでも?逆恨まれるだけだっつーの」

心亜の言い分に、女は口をつぐんだ。

「ファンクラブ会長の示しもつかないしね。あ、そういやファンクラブどうなったの?」
「解散したわ。…私たちではどうしようもないもの」

悲しそうに言った。
私がはは、と笑うと彼女は目を伏せた。

「君も不幸だよね。あの時違う選択肢を選んでいたら、全く違うエンディングが見れたのに。さながらこれはbad-endかな」

心亜は女が手に持っている紙に視線を落として言った。
とたんに手に力が入り、くしゃりと紙が音を鳴らす。
心亜は、それがなんなのか知っていた。

「学校、辞めるんだ」
「……」
「残念だなぁ。彼らがキングに返り咲く姿を君は拝めないなんて」
「…無理よ。もう、無理…」

ここで、彼女は心亜の声に耳を傾けてはいけなかった。
そんなことをしてしまえば、自分の傷が深まるばかりだと知っていたから。

「…最後に、あなたに言いたいことがあるの」
「うん」
「ありがとう。…大嫌い」

心亜は笑った。

「どういたしまして。私は大好きだ」

女は走って部屋をでた。目に涙を浮かべて。
部屋に残った少女は不適な笑みを浮かべた。

机に落ちていた数滴の涙を見て。


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