もしもヒロインがバンパイアだったら

疼く、痒い。まさにその通りだ。

バンパイアの心亜は、やはり定期的に血を飲まないと駄目らしい。
しかも心亜はグルメなので、美味しいと思った人間の血しか飲まない。
そして心亜は血を吸うという化け物じみた行為を毛嫌い、自らを殺しにかかっているのだ。

そんなの俺は気にしてないのに、ね。

床に座り込み、息を殺し必死に強がる心亜の丸まった背中を見て、俺の何かがふるえた。

「心亜」
「うる、さいっ…」

今度は何日飲まずにいたのか。
でも俺以外の血は飲んでないらしい。
こんなに衰弱してるってことは、きっとそうだろう。

いや、それだからいい。
それで、いい。

上着を脱ぎながら心亜に近づき、しゃがみ込む。

「心亜」
「なんっ…」
「飲んでいいよ。見てられない」
「っ…」

紅潮した顔で俺を見上げる心亜。ああ、やばいな、俺も心亜も。

どうしようかと考えている暇なんて俺には与えず、心亜は乱暴に俺に襲い掛かり、首に噛みつく。

小さな痛み。火照る体。
息を吸うように、血を吸う心亜。

食事中の心亜は普段より大人しい。
それはきっと、俺という、折原臨也の血のせい。

心亜を抱き締め、俺は笑う。
心亜がバンパイアである限り、この子と俺は離れられない。
ああ、なんて甘美な響きだろう。

うっとりしていたら、今度は反対側の首を噛まれた。

「いった…もうちょっと優しくできないの?」

問いかけには応じず、俺を無視して胃を満たしていく。
俺に寄りかかりながら、俺に抱きしめられながら、必死で血を吸う。こんな光景、見られたらたまんないだろうな。

さっきまで噛んでいたほうの首を触ると、生暖かい血が二つの噛み痕からまだ流れていた。

それをみてまた俺は笑う。

それに気づいた心亜が俺の指をしゃぶるまで、あと二秒。


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