折原家のクリスマス

中2のとき

「俺、クリスマスプレゼントには心亜がほしいなぁ」
「あげないよ」
「じゃあ奪っちゃおーかな?」
「…キモい」

私がそう言うと、兄さんは楽しそうに笑った。
ちなみに、今日はクリスマス。


「心亜って、まだ誰かにキスしたことないよね?」
「ないよ」
「じゃあ、心亜のキスがほしい」

何言ってんのこいつ。

「冗談じゃないよ?超本気」
「世間ではこういうの、近親相姦っていうんじゃないの?」
「キスくらい兄弟の間じゃよくあるよ。それに、近親相姦は身内と肉体関係を持つことだし。ギリセーフじゃん?」
「…じゃあちなみに聞くけど、どこにキスするの?」
「口」
「アウトだよ」

聞いた私が馬鹿だった。また雑誌に目を落とす。

「えー?じゃあ口以外ならキスしてくれるの?」
「しないよ。ってか、何でする事前提なの」
「それは今日がクリスマスだからです」
「だからって何でもかんでも貰えるとは限らないよ。それにもう兄さん、大人だし」
「別に俺はサンタに頼んでるわけじゃないよ?心亜に頼んでるんだ」

図々しいにもほどがある。

「とにかく、キスなんてしない。兄さんにキスするなら静雄さんとキスするよ」
「………は?」

声が下がった。あ、怒った。
あーあ、やっちゃったな。言わなきゃよかった。

「何?俺よりシズちゃんとキスしたいわけ?」
「したいなんて言ってないよ。どっちかとしなきゃいけないなら静雄さんとやるってだけの話でしょ」
「だからつまり、シズちゃんとキスしたいんでしょ?」
「…違うよ」

めんどくせぇ。何をムキになってるんだろう。
もういいや、無視しようと思い、また雑誌に目を落としたら、雑誌が取られた。
いつの間にか兄さんが横に座ってる。

「嫌だ。そんなの絶対許さない」
「許可もらうほどのことでもないと思うんだけど」
「いいから、もう二度とシズちゃんとキスするとか言わないで。すごいムカつくから」
「…何で」
「何で?そりゃ心亜が大好きだからだよ」

ここからもう根本的に違う。

「まずそこがわからないよね。何で私が好きなの?妹である私が」
「妹なんて関係ないんだよ。新羅はデュラハンが好きだろ?つまり、人種だとか種族だなんて関係ない。俺は心亜が好き。キスしたいし抱きたいし、結婚だってしたい」
「…それどんな漫画?」
「またはぐらかすんだ」
「だって、折原臨也は兄である以上、私の恋愛対象にははいらないよ。さっきのだって、怖いくらいだ」
「さっきのって?」
「キスとか抱くとか結婚とか」
「怖いんだ?」
「怖いよ。兄貴にそんなに迫られたら、怖くないほうがおかしい」
「…成る程。じゃあ俺はこの恋は成就しないわけだ」
「そうなるね」
「でも、クリスマスプレゼントとそれは、また別の話」

懲りないな、と兄さんに言おう横を向いたら、押し倒された。
目の前には、兄さんと天井。

「さ、チューして」

少しの間、思考が停止した。
あれ、何この状況。

「…反応がないと、こっちも困るんだけど」
「…死ね」
「えー?開口一番それ?」
「じゃあどいて、邪魔」
「んー、キスしてくれたらね」

ニコニコ笑う兄さん。
なんで私がキスなんか、と思ったけど、もしかしたら一泡吹かせるチャンスなんじゃないのか?

そうだ、これを気にもっと自重してもらおう。

「兄さん」
「ん?」

何、と言う前に、私は兄さんの胸ぐらを引き寄せた。そして、鼻の先に口をあてた。すぐに離したけど。

顔を離すと、兄さんは固まっていた。何だよ、自分で言ったくせに。

「はい、お終い」

反応がない。固まっている。

「………参ったな」
「は?」

みるみる顔が赤くなり、私から退いた。

「…何?どうかした?」
「ちょっと出掛けてくる」
「…?いってらっしゃい」

フラフラした足取りで、兄さんは玄関に向かった。いつものコートを着て。
フードをかぶって、足早に外に出た。

……自重したのか?ま、いっか。
唇をティッシュで拭いてから、私は雑誌に目を落とした。




(可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い!!!!キスされた!!キスされたぁああ!!!ああ、心亜ラブ!!)



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