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迫害だなんだ、私には無縁だと思っていたがそうじゃなかったみたいだ。

折原心亜は腹部を押さえ、先程自分を蹴った女を見上げた。

「…ひどい事するなぁ」
「は?誰に口聞いてるの?」

女はあざ笑った。心亜も笑った。

「恩を仇で返すなんざ、ひどいって言ってんの」
「恩?あんたに恩なんかないわよ」
「君を男子テニス部マネージャーにして、ファンクラブからも目をつけられないようにして。そんな矢先に私を陥れて…」
「はぁ?あんただって私を利用してたじゃない。私を利用してテニス部に近づいて、興味なさげなふりして…あームカつく、ムカつく」

心亜はニヤリと笑った。
それを見た女は一気に顔を歪ませ、心亜の腹にまた蹴りを入れた。
このやりとりが何回続いただろうか。
折原心亜を殴り、蹴り倒す彼女は、今じゃこの学園の権力者である。
その土台を作ったのが心亜だった。
心亜の計算上、彼女を権力者に下手あげ、自分は影の権力者になる予定だったがただ狂いになった。

だが何を勘違いしたのかこの女は、心亜は自分を利用してテニス部に近づいたと思い、彼女を陥れた。

勿論、心亜にその気はない。

彼女があんな集団を性欲はおろか、恋愛対象に見ることなんて無に等しい。

何故なら彼女には最愛の人がすでにいるからだ。


「被害者ヅラしてんじゃないわよビッチが」
「あー痛い…泣きたい」
「なに?泣いたら助けてくれるとでも?」
「思ってなくはないかなぁ』」「残念だけどあんたに味方はいないわよ」
「うん知ってる」

口の中が血の味がした。何ヵ所か切れているらしい。
さてと、どうしようかな。

「汚いツラ。見せんな」
「君がこうしたんだろ」
「洗ってあげようか?」
「優しいね」
次の瞬間、心亜の頭上から水が降ってきた。
ビチャビチャと冷たい水が、心亜の体を蝕んだ。
目の前の女はキャハハと腹を抱えて笑っている。なんて醜い女だろう。
頭上から降る水が止むと、上からも笑い声が聞こえてきた。

「あっはは、超ウケる!!あーキモイ!!また放課後遊んであげるから逃げんなよ」

女はそう言って去っていった。
授業開始の鐘が鳴り、心亜は薄く笑った。



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