臨也と新羅の心理カウンセラー

池袋某マンション。
その一室で風変わりな青年たちがくつろいでいた。

臨也は紅茶を口へ含み、ふぅ、とため息をついた。そこで一言。

「いつになったら心亜は俺の気持ちに気づいてくれるんだろう…」
(また何か変なこと言ってる…)

それを聞き、新羅はやっかいな患者が来たと後悔した。



臨也と新羅の心理カウンセラー


「俺は生まれてから一度も心亜以外の女に心を許したことなんてないのに…心亜ときたらドタチン達と仲良くなって、あろうことかシズちゃんとまで親しくなってさ」
「心亜ちゃんだって年頃の女の子だからねぇ」

今ここにいない妹の話をまるで彼氏のように話す臨也。実際こいつは彼氏ヅラしているのでいちいちかまっていられない新羅は的を得た受け答えをした。

「そう、そこなんだよねぇ。年頃の女の子だから不安なんだよ」
「えー?不安になることなんかないでしょ。心亜ちゃんだよ?」

すると臨也は足を組み、ハッと笑った。

「あのねぇ、心亜だって女の子なんだよ。つまり、いつかはあの子の純潔が奪われる」
「何言ってんの」

聞くんじゃなかったと後悔した。

だが臨也は興奮しているのか肩を振るわせ悶えながら力説を始めた。

「真面目な話だよ。もうホント…ああ、たえられない!!あの子の初めてが俺じゃないなんて!!!」
「ねぇキモいよ」

とりあえず言っておいた。言わないといけない気がした。

でも臨也はうおおおお俺の心亜があああとなお悶えている。そんなに妹が大事か。

「大丈夫でしょー、心亜ちゃん男に興味ないし。ガードだって固いでしょ?」
「冗談で(といっても七割本気で)ベッドに押し倒したら思いっきり股間蹴られた。痛かったなーアレ」
「(不憫…)それなら大丈夫でしょー。心配しすぎじゃない?っていうか僕としては中学生の妹に発情する君のほうが心配だよ」「好きな人が妹だっただけだよ。新羅だって恋する身であれば発情しちゃうでしょ?」
「一緒にしないでくれる」

心亜ちゃんには悪いけどこれは侮辱行為に等しかった。
だが当の本人は悪びれる様子はない。

こりないなぁこいつは本当にと学生時代の臨也を思いだし寒気がしたのでホットコーヒーを飲んだ。

「っていうか臨也のシスコン、いい加減治しなって。心亜ちゃんもウザがってるって」
「いいのいいの。あの子ツンデレだから」
「初めて聞いたよ」

勘違いもいいとこだ。

「で、どうしたら心亜が振り向いてくれると思う?」
「毎日アタックすれば何かしらの反応をすると思うけど」
「メールが毎日無視されるんだけど脈アリかな?」
「素晴らしいポジティブ精神だね」

不憫だなぁと目の前で携帯をいじる臨也を見て思った。

「でもあっちも結構俺のこと好きだと思うけどなぁー」
「何で?」
「よくジュースとか回し飲みするし。これって間接キスでしょ?」
「いやまぁそうなるけど心亜ちゃん一般常識人とかけ離れてるから、それが普通の行為なのかもよ?もしかしたら他の人ともしてるかも」

そう言うと臨也はむっとしてせせら笑った。

「それはないと思うけどなぁ。心亜は基本他人に心を許さないし」
「いやいやわからないよ?てっとり早く本人に聞いてみよう。臨也のメールはシカトされる可能性が高いから、俺の携帯で」
「新羅って心亜とメールするの?」
「基本しないよ?交換したくらい」
「心亜って誰構わずメアド交換するから、こっちとしては大変なんだよね」
「何が?」
「全部削除するのが。それにほら、あっちからも来ないようにするためにメアド変えなきゃだし」
「心亜ちゃんの携帯だよね?君のやってること一種の犯罪だよ。あ、返信来た。早いな」
「何て送ったの?」
「"ジュースの回し飲みとか静雄としてる?"」
「なんでシズちゃん!?…いやまぁいいけど。絶っっ対、やってないよ。断言できる」

どこからそんな自信がくるんだろう。心亜ちゃんは兄の臨也より静雄と仲いいのに。

まぁ、何を言っても無駄か。

「いくよ?せーの」

受信ボックスの一番上のメールを開いた。





するけど






「……」
「……だから言ったじゃん」
「ちょっと待って、じゃあ…。俺は何?心亜を通じてシズちゃんとも間接キスしたってこと?」
「…まぁそうなるかな」
「………」
「………」

沈黙の末、臨也は上着を持って立ち上がった。

「…ちょっと殺ってくる」
「行ってらっしゃい」

返り討ちにされそうだなぁ。


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