もしも男嫌いだったら

俺らの学校には「女王」なるものがいてその女王は俺のクラスに在籍している。

冷静沈着文武両道、負けしらずときて負けなしな彼女には、一つ欠点があった。
男嫌い。

「……何」

ホラ見てみんしゃい。
クラスを代表してプリント集めようとしてる俺を見上げる目はどぶねずみを見るような目。
女子は普通こんな目しないんじゃが。彼女は例外。

「プリント、回収しにきたんじゃ」
「………」

そう言うと意味もなく睨まれた。酷くないか。
善意でやってやってんのに何で俺睨まれんじゃ。

「はい」
「ん、確かに」
「…」

プリントを渡した折原は、前に向き直る際横目で俺を睨み、あろうことか

「…チッ」

舌打ちした。
それが聞こえた俺は、沸々と怒りが膨張。
は?舌打ち?いい度胸じゃなか。

「いい加減にしてくれんか」
「…は?」

俺がそう言うと驚いた、というより何コイツと言わんばかりの表情。
何コイツって。こっちのセリフじゃ。

「男嫌いだかなんだか知らんけど、舌打ちするなんていい度胸しとるのう」
「……」

そういうと折原は俺と目を合わすのをやめてうつむいた。
何じゃいまさら。

「女王だからって気どって何でも許されると思うなよ」
「……」
「大体、女王が男嫌いなんて、聞いてあきれるの」
「……れ」
「あ?」

ギラっと充血した目を向け、いや、睨まれ。

刹那、彼女はポケットから何かを取り出し立ち上がり、右手におさめられたそれが、俺の首筋に突きつけられた。

それを横目で見た俺は――呆気にとられた。

カッターだった。刃が5センチくらい出ている。市販の、よく売ってるやつ。

――は?

事態が呑み込めない。

冷や汗が垂れた。手からプリントが落ちた。折原心亜は、首にカッターを突きつけなお、俺を睨み付けている。

「黙れ」

その声がはっきり聞こえた。
数えるほどしか聞いたことない声の中でも、一番低い声で。

「男の、クズの分際で私に近寄るな。殺すぞ」

首に刃があたった。冷たい。

「虫酸が走る」

そしてまた舌打ちし、カッターをしまってその場を早足で後にした。
俺の手から落ちたプリントを踏みつけて。

兎に角、今ここにクラスの奴らがいなくてよかったと思う。



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