近所に住んでいる男子高校生ミツオ君。まぁ私の幼なじみなんですが、何かと不憫、可哀想な男の子なんです。
やることすべて裏目に出て、為すことすべて失敗する。
なんでこーも不幸なのかなーと考えてみるとそれはもう天性の才能として片付ける他ない、とこの不憫系男子を目の前にして私は思うわけだ。
近所に住んでいる女子高校生名前。まぁ俺の幼なじみなんだけど、何かと幸運で羨ましい女子だ。
やることすべて成功し、為すことすべて出来がいい。
なんでこうも強運なんだろうと考えてみると、努力というより天性の才能と言ったほうが早いと、このラッキーガールを目の前にして俺は思うわけだ。
「ミツオ君って、ほんと不憫だよね」
「お前こそ、ほんと強運だよな」
久しぶりに会った幼なじみは、ほんの少しだけ成長したように見えた。
髪下ろしてるんだなーとか俺はそんなくだらないことを思った。口には出さない。
名前は苦笑いしながら俺が注いだ緑茶を飲んだ。
「強運かー。でもね、不安なんだよ。もしかしたらあと数年で、一生の運を使いきっちゃうかもしれないし」
「…その論理でいくと俺のこの不幸はあと数年で終わるのか」
「そしたらミツオ君、目一杯幸せになれるね。私はお先真っ暗だよ」
名前はそう言うと、あーうらやましーと言って頬杖をつきリモコンでテレビをつけた。流れてきたドラマの再放送は刑事ものだった。
名前のことは正直羨ましい。俺もああなりたかった。けど、俺が幸せになったら、名前は不幸せになるのか?
それは、正直、ちょっと嫌だ。
目の前に座る名前を見た。リモコンでテレビのチャンネルを変えていた。
「…あのさ」
「何?」
「俺って、あんまし運よくないだろ?」
「そだねぇ」
「お前は、何かと運がいいだろ?」
「うん」
「もしさ、俺とお前が一緒になったら、俺たちはお互いのマイナスとプラスを半分にして、プラマイ0になるんじゃね?」
名前の手の動きが止まり、チャンネルはまた元の刑事もののドラマになった。
「……つまり、どういうこと?」
名前は画面から目を離さずに言った。
「あー、つまりさ…俺がお前を不幸せにしてやるから、お前は俺を幸せにしてくれよ。そうすれば将来、並の幸せ味わえると思うんだけど」
「……つまり?」
「つまり!?…いや、もうわかって…。…まぁいいや。言うよ。えと、付き合わない?俺と」
名前は黙り込み、数秒後ふふ、と笑った。
「…それ、一体いつ言ってくれるのかなーって思ってた」
「え?」
「待っても待っても言ってくれないし。危うく別のに乗り換えるとこだったよ」
「…え?なに?ごめん話が見えない」
すると名前は本当に馬鹿だなぁと呆れて笑った。
「うん、ミツオ君を幸せにしてあげるよ」
「…それ、本来こっちが言うセリフじゃね?」
「うん。またいつか、言ってくれるの待ってるよ」
その言葉の意味がわかって、俺は誤魔化すようにテレビ画面に目を向けた。
盗み見した名前の横顔は、耳まで真っ赤だった。
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